【独裁首相が国外逃亡し議会も解散】バングラデシュ暫定政府へ中国やインドはどう動くか
中国は、バングラデシュとの経済・軍事関係、およびバングラデシュ民族主義党(BNP)や一般大衆のインドに対する反感を利用しようとするだろう。中国は、バングラデシュへの投資増を約束するかもしれない。二国間貿易(主に中国からの輸出)を更に拡大しようと誘い、バングラデシュからの輸入増を約束するかもしれない。 短期的には、バングラデシュに関与するすべての国にとっての大きな関心事は、その安定である。さらに先を見据えると、そうした諸国の最大の希望は、地政学的なライバル関係にある国々が共存する方法を見つけることだろう。しかし、大国間の競争が激化する中で、バングラデシュの政治を再起動させる暫定政府の取り組みは、一層困難になるだろう。 * * *
暫定政権は機能するのか
バングラデシュは1991年の軍政終了後、2大政党が交互に政権に就く一見すると健全な民主主義国として発展してきたようだった。その2大政党の対峙は、今日まで2人の女傑政治家の30年以上に及ぶ確執の中で続いてきた。 一方のシェイク・ハシナ女史は、この国を独立に導いたムジブル・ラーマンの長女であり、父親がクーデターで殺害された折に国外に居て難を逃れ、帰国後にアワミ連盟(AL)の党首として、今年までその党を率いてきた(76歳)。もう一方のカレダ・ジアは、軍人で軍政下にあって大統領にもなって暗殺されたジアウル・ラーマンの未亡人であり、バングラデシュ民族主義党(BNP)の党首として今日に至る(79歳)。 1991年の民主化以降、両党は総選挙で交代に政権に就き、それぞれは首相として国政を運営した。総選挙は小選挙区制で、政権側は次の選挙で有利だとの理由で、この国では総選挙前に暫定政権を設置し、総選挙を実施することになっていた。 ところが2008年の総選挙でハシナ側が政権を得た後、憲法を改正して暫定政権方式を廃止した。BNP側はその後の選挙をボイコットし、09年以来今日までハシナ側が政権を独占してきている。 今回の混乱を経て、内政面での課題は、アワミ連盟(AL)に対し、イスラム色の強いバングラデシュ民族主義党(BNP)等の攻撃がどう続くかにある。ヒンズー教徒のベンガル人やインド人への反感が顕在化しないか、治安維持にとり重要な警察への反感が残らないかと言った諸点がこれからの同国の政治の安定にとって重要である。