車両不足のロシア軍、鹵獲したオランダ製APCも活用 屋外保管の歩兵車両4割減
米国のFMC社とオランダの企業グループは1977年、オランダ陸軍向けにYPR-765装甲兵員輸送車(APC)の生産を始めた。重量14t弱、乗員3人、搭乗可能な兵員数7人のこの装軌車両は以後、2000両あまり製造された。 生産開始から35年後、オランダ陸軍で運用されていた最後のYPR-765が退役した。その約10年後、オランダはロシアの全面侵攻を受けたウクライナの戦争努力のために、余剰になっていたYPR-765の供与を表明した。これまでにウクライナ側に引き渡したか供与を表明した数は269両にのぼる。 ロシアがウクライナに対する戦争を拡大してから2年半の間に、ロシア軍はウクライナ軍のYPR-765を少なくとも5両鹵獲(ろかく)した。そしてその1両を23日かその少し前、ウクライナ東部ドネツク州の前線に投入した。 ウクライナ軍はこのYPR-765を攻撃し、炎上させ、ロシア軍の人員少なくとも2人を死亡させた。攻撃による無惨な結果はウクライナ軍のドローン(無人機)によって上空から撮影されている。 数奇な運命たどってロシア軍の手に渡ったYPR-765は、3年目に入るこの戦争の最も重要な動向のひとつの傍証とみることもできるだろう。ロシア軍で進む装甲車両の不足である。ロシア軍が、50年近く前に開発されたオランダ製の鹵獲車両を再利用せざるを得なかったのには、それなりに理由があるはずだ。 ロシアがウクライナに対する戦争を拡大した2022年2月の時点で、ロシア軍は主要な歩兵運搬・支援車両である装甲兵員輸送車と歩兵戦闘車(IFV)を合計で1万1000両ほど配備していた。 ドローンが飛び交い、砲弾が降り注ぐウクライナの戦場では、歩兵戦闘車と装甲兵員輸送車は戦車より重要だと言っても過言ではない。米カーネギー財団のアナリスト、マイケル・コフマンが早くも2022年8月の時点で「ロシア軍の装甲車両で不足しているのは戦車ではなく、IFVなのではないか」と言及していたのは慧眼だ。