3軍制か、少数精鋭か? ソフトB、巨人が導入した3軍制の是非
今オフにヤクルトの2軍監督に就任、長年ファームディレクターを務めてきた宮本賢治氏は、こう言う。 「選手育成の理想を言えば、やはり3軍制だろう。2軍は108試合程度あるが、1軍の待機選手と育成しなければならない選手が混在していて起用が難しい。巨人が松本哲也外野手や山口鉄也投手という育成から選手を出した例があるので、ヤクルトも、過去に野手、投手と育成選手を取ってきたが、野手は2軍では試合出場機会がなく、現在ではまだ投げる機会のある投手だけになった。おそらく3軍があれば、こういう悩みは解消され、プロとしての基本技術のない選手でも、出場機会を与えることができると思う。 しかし、3軍を作るには資金も環境整備も必要で簡単ではない。そこで考えたのが強化選手制度。年のはじめにフロント、現場指導者らスタッフ全員が集まって、集中して育てるメンバーを決める、山田哲人、中村悠平も、その強化制度から出てきた選手。山田は、1年目は全試合に出た。3か月ごとに強化選手に点数をつけ、何を教え、どこが育ち、今課題は何かというレポートを担当コーチに提出させ、常にチェックしながら育成過程を見守っていく。もくろみがはずれ、強化選手が育たないケースもあるが、現状では待機選手と育成の葛藤を抱えるファームでは、これがベストな方法だと考えている」 ほとんどのプロ野球関係者が理想だとする3軍制だが、メリットばかりではない。ヤクルトの宮本2軍監督は、3軍制の抱える問題点も指摘する。 「現状は、ソフトバンクと巨人にしかないので対戦相手に困るだろう。プロでも育成の選手レベルでは、大学や社会人の強豪チームの方が強いのが実情だが、高いレベルの中で経験を積ませなければ、成長に限界はある。また選手層が厚くなると、実力があるのに1軍の試合に出れないという現象が起きてくる。せっかくの素質を持った選手が、下で腐ってしまうのはもったいないし、プロ野球界としても損失だろう。今年、ヤクルトに複数トレードでソフトバンクから来たアンダースローの山中浩史も、出場機会のなかったピッチャーだが、ウチで6連勝したんだから。ウチへ来てからちょっとしたワンポイントアドバイスで変わったんだが、こういう選手を埋もれさせる危険もある」 ウエスタンリーグでも圧勝したソフトバンクは、6月まで2軍にバーデンハークがいて5勝1敗の数字を残していた。ローテーションは、岩嵜翔、千賀滉大、帆足和幸、東浜巨、山田大樹の5人で、ピッチャー不足の球団ならば、誰もが先発に食い込めるような人材である。確かに3軍制には、そういう葛藤も出てくる。 3軍制のメリットを連続日本一という結果でソフトバンクが証明、巨人もその育成システムの後を追随してようとしているのが、果たしてこの3軍制の流れは、今後球界にどのようなインパクトを与えるのだろうか。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)