日本農業の弱体化認め「正念場だ」 農家育成に反省点 小里泰弘農林水産相インタビュー
小里泰弘農林水産相は産経新聞などの就任インタビューに応じた。日本農業が弱体化している認識はあるかと問われると、「ある。正念場だと思っている」と明言し、これまでの農業政策に反省点があると認めた。自民党農林部会長や農水副大臣などを歴任してきた農政経験を踏まえ、担い手農家の育成やドローンなど先端技術を活用するスマート農業の普及に向けた政策で「足りない部分があった」とも指摘した。主な一問一答は以下の通り。 ――今夏のコメ不足について 「（南海トラフ）大地震に関する臨時情報や台風があり、市場と消費者が混乱した傾向があった。なぜこのような事態が起きたのか、原因を解明して、今後の対策をしっかりとっていく。在庫や出荷状況を把握しながら、正しい情報を早めに発信することが第一だと思っている」 ――不足に関わらず政府は備蓄米を放出しなかった 「備蓄米は著しい不作や2年連続の不作といった緊急事態に備えている。今回はそういった環境とは違うところに（コメ不足の）原因があったと思う」 ――農家や農地が激減し、食料自給率の低下も続く。日本の農業が弱体化している認識はあるか 「ある。正念場だと思っている。この1年間、農業の現場を回り、地域活性化だけでなく、産業としての農業を前進させるための多くのヒントを得た。良い芽は出てきており、国として具体的な支援策に力を入れていく」 ――これまでの農政の反省点は 「担い手農家の育成は、できていなかったと思う。また、スマート農業の活用を広げて生産性向上を図ろうとしたが、まだまだ足りない部分があった。また、政府の政策や対策が円滑に現場に届かず、周知できていない部分もあった」 ――農林水産物・食品の輸出拡大に向けた政策は 「昨年までの輸出実績は11年連続で増加している。ただ、東京電力福島第１原発処理水の海洋放出後の中国による日本産水産物の輸入停止措置の影響で、今年は1～7月の実績で前年同期比でマイナスとなった。中国などに対し、科学的根拠に基づかない輸入規制の即時撤廃を求めて交渉を行う。同時に輸出先の多角化や、日本食レストラン以外の販路開拓を進める」（聞き手 西村利也）
