【米国株ウォッチ】世界最大の資産運用会社、ブラックロックの最新動向
世界最大の資産運用会社であるブラックロックの株価(ティッカーシンボル:BLK)は年初来で約33%上昇している。比較として、同期間のS&P500種株価指数の上昇率は約28%で、ブラックロックの競合であるステート・ストリートは約30%高となっている。 ここ数年間のブラックロック株の年間パフォーマンスはまちまちだ。2021年のリターンは29%、2022年はマイナス20%、2023年は18%だった。 ブラックロックの第3四半期決算は予想を上回った。収益は前年同期比15%増の52億ドル(約8000億円)、純利益は同1.7%増の16億3000万ドル(約2510億円)となった。こうした成長の主な要因は、好調な市場環境、基本報酬の増加、パフォーマンス・フィーの増加であった。運用資産残高(AUM)は、純資金流入が4560億ドル(約70兆2200億円)となり、併せて資産評価も上昇したことで、前年同期比2兆4000億ドル(約370兆円)増の11兆5000億ドル(約1771兆円)となった。 同社の収益性も改善している。営業利益率は前年同期比3.5ポイント改善の45.8%となった。収益性の改善はいくつかの要因によってもたらされた。ブラックロックでは、手数料の高いオルタナティブ投資など、利益率が高く手数料の高い商品の構成比が高まっている。さらに、上場投資信託への資金流入も増加した。これらの商品の手数料は低いが、比較的運用にかかるコストが低い商品であるため、AUMの増加幅と比べてコストの増加幅が小さくなっている。 ■非公開株式市場への参入も進む ブラックロックは今年、非公開株式市場への参入も着実に進めている。2024年1月にGlobal Infrastructure Partnersを約125億ドル(約1兆9300億円)で買収すると発表し、同6月には非公開株式のデータベースを提供するPreqinを32億ドル(約4900億円)で買収すると発表した。また、今月初めには、プライベートクレジット会社のHPSインベストメント・パートナーズを約120億ドル(約1兆8500億円)で買収する計画を発表している。この買収により、ブラックロックは2025年に約8億5000万ドル(約1309億円)分の基本報酬を追加で獲得すると言われており、同社にとって、非公開株式市場への参入は非常に重要である。 非公開株式の分野では、機関投資家や富裕層の顧客からより高い手数料を得ることができる。また、これにより運用資産全体に対する公開株式での運用残高の割合が減ることで、分散投資を強化することにもつながる。さらに、年金基金、寄付財団、政府系ファンドを含むブラックロックの既存顧客は、彼らの長期的なリターン目標を達成すべく非公開株式への資金配分を増やしており、ブラックロックは非公開株式市場への参入によってそのニーズに応えることができる。 私たちは、ブラックロック株の目標株価を約913ドルとしている。これは現在の株価を下回る水準だ。
Trefis Team