30代女性に突然降りかかった不可解過ぎる相続問題…亡き叔父の財産「赤の他人へ全額遺贈」に覚える強烈な違和感
利用していない建物に、権利主張するのはむずかしい
使用貸借という現状から、法的には、権利主張をすることはむずかしいということになりました。 「裁判例上、建物所有目的の土地の使用貸借の場合は『建物の使用が終らない間に借主が死亡しても、特段の事情のない限り敷地の使用貸借が当然に終了するものではない。』と判断しているものもあります(大阪高裁昭和55年1月30日判決)」との補足もありましたが、この点については、具体的な事情により裁判例でも判断が分かれるようです。 「もし対象となっている建物を佐藤さんが使用していたなら『使用貸借が終了していない』と権利主張ができる可能性もあるかもしれませんが…。使用していないければ『借主死亡により、使用貸借契約終了』と判断される可能性は、かなり高いでしょうね…」 弁護士の意見から、やはり権利主張はむずかしいと判断しました。 そのため、筆者と弁護士は、佐藤さんに鈴木さんからいわゆる「ハンコ代」程度の謝礼を払ってもらい、解体を承諾するほうがいいとアドバイスしました。
赤の他人が全財産を遺贈される状況に「強い違和感」
今回、公正証書遺言により財産の遺贈を受けた鈴木さんはまったくの他人です。この状況は、親族である佐藤さんでなくても違和感を覚えます。佐藤さんと生前に交流がないにしろ、親族に通知もなく手続きが行われたことに意図的なものを感じます。 生前に交流がなく、財産の形成や介護などの貢献をしていないにしろ、それでも血縁のある親族です。実の父親から養育費ももらわず育ったことを考えれば、せめて相続のときくらいは、いくらかでも親族へ…という配慮がないものかと残念に思います。 残る方法は、亡くなった父親の弟の相続人となる、母親の遺留分についての侵害請求です。これを機会に、佐藤さんには祖母と交流を持つよう、弁護士からもアドバイスがありました。 祖母と交流を持てば、将来の祖母の相続時に慌てなくてもすむため、佐藤さんにとってメリットは大きいはずです。 今回、もし遺留分侵害額請求によって祖母の財産が確保できるなら、佐藤さんはただ1人の孫として祖母の相続財産として受け取ることができるため、今回、もらえなかった財産のかわりになるといえます。 ※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。 曽根 惠子 株式会社夢相続代表取締役 公認不動産コンサルティングマスター 相続対策専門士 ◆相続対策専門士とは?◆ 公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。 「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
曽根 惠子