30代女性に突然降りかかった不可解過ぎる相続問題…亡き叔父の財産「赤の他人へ全額遺贈」に覚える強烈な違和感
父親所有の建物の固定資産税評価は、およそ1,000万円
例の土地の上に建つ、亡き父親名義の建物は、築年数10年程度で、少し変わった形状の注文住宅です。おそらくそこに佐藤さんの父親と祖母が生活していたと思われます。 建物の広さは40坪、建物の固定資産税評価は1,000万円程度。土地の面積は60坪で、売却する場合は5,600万円~6,000万円程度の販売価格になることから、いまある建物を解体して更地にしたほうが売りやすいということのようでした。 しかし、佐藤さんは父親が亡くなっていたことも他人経由で初めて知らされたうえ、父親の相続や財産について何も知らず、財産となる建物も取り上げられるとなると、すんなりハンコを押す気持ちにはならないでしょう。 鈴木さんが佐藤さんの建物を買い取るなり、いくらかでも費用を払うなりしてもらわないと、納得できないのも無理もありません。そこで、筆者は業務提携先の弁護士と打ち合わせ、対応を検討しました。
土地の使用貸借は、借主の死亡によって終了する
土地と建物の所有者が違う場合、建物の所有者は、土地の所有者から場所を借りている状態だといえます。本来なら、地代や権利金を払うところ、親族の場合は無償で建てているケースがしばしばみられます。佐藤さんの父親も、おそらく使用貸借の状態で土地を無償で借りて、建物を建てたのではないかと推測されます。 父親が先に亡くなっていますが、その前に建物を弟に遺贈する手続きをしていれば、佐藤さんに話が来ることはなかったのですが、そうした手続きはされておらず、現在も建物の名義は亡くなった父親のままとなっています。 今回法的に問題となるのは、借主である父親が亡くなったことで、死亡による使用貸借契約が終了するか否か、という点です。 弁護士に確認したところ、この点については、民法597条3項において、「使用貸借は、借主の死亡によって終了する」と規定されおり、原則論でいえば、この条項が適用され、借主死亡により使用貸借契約は終了するため、建物所有者は、建物を収去し、土地を明け渡す必要があるということでした。