《池上彰解説》日本国憲法が「国家の名誉にかけ」世界に訴える平和の誓い 700文字の“前文”に込められた「崇高な理想」とは
世界のなかの日本という視点
日本国憲法には条文の前に、700字ほどの前文が記されており、 ここには日本がめざすものが掲げられています。それは要するに「平和主義」と「国民主権」の2つです。 このことは、前文の最初のほうに、「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する」と高らかに謳われていることからもわかります。 ひと言でいえば、この前文は「平和の誓い」と言い換えることができますが、大切なポイントがもうひとつ。それは、恒久平和を人類普遍の理想とし、それを「国際協調」によってめざさなくてはならないとしていることです。 「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」 「われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」 とあるように、日本の平和と安定だけを願っているのではなく、世界平和のために努力することを誓っているのです。 このように「世界のなかの日本」という視点が色濃くうかがえるのが、この前文のもうひとつの特徴といえます。 そして最後に、「日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ」と力強く結んでいます。
弁護士JP編集部