キャリア初ダウンからの圧巻逆転TKO! 東京Dを沸かせたKOアーチスト・井上尚弥
5月6日(月・祝)、東京ドームで、井上尚弥 vs ルイス・ネリのスーパーバンタム級4団体統一タイトルマッチが行われ、井上が1Rでダウンを奪われながらもその後計3度のダウンを奪ってルイス・ネリに6回TKO勝ち。多くの予想通り「悪童成敗」を遂げたが、その内容は東京ドームを何度も揺るがす、「ピンチあり・逆転あり」の劇的KOショーだった。もちろん数字の面でも圧倒的だった。 【動画】試合経過は本誌速報記事でチェック! アマプラ公式Xが公開したハイライト動画や、TKOされたネリがロープにうなだれる衝撃ショットも記事内で紹介中。
■井上まさかのキャリア初ダウンから、圧巻の逆転KOショーで悪童成敗!
『モンスター』井上尚弥は、ここ数年ですべてを手にしたかに思えるほどの結果を挙げてきた。2階級目の4団体王座統一は、バンタム級での達成からわずか1年で実現した。名門誌『The Ring』(リングマガジン)など著名メディアのパウンド・フォー・パウンドで1位を獲得し、今もトップクラスに君臨する。 そんな井上が次に目指したのが、マイク・タイソン以来、34年ぶりの東京ドーム・プロボクシング興行で日本人初のメインイベントに立ち、その偉業舞台で日本ボクシング界の「怨敵」であるルイス・ネリを迎え撃つことだった。 山中慎介とのWBC世界バンタム級タイトルマッチを巡る2度の愚行(ドーピング、体重超過)から、日本での資格を停止された『悪童』ネリとの試合は、少なからず反発もあったが、「悪童成敗」というストーリーは、東京ドームという決戦場に打ってつけだった。 ただ、「仇討ち」と「ネリの再犯可能性」に話題が集中することになったが、その結末は、KOアーチスト井上による「映画のようなKOショー」だった。 前日計量を-500gでパスしたネリを見直す声もあったが、東京ドームに集まった観衆は、しっかりと大きなブーイングで応えた。井上はノニト・ドネアとの第2戦以来となる、布袋寅泰氏の「BATTLE WITHOUT HONOR OR HUMANITY」生演奏パフォーマンスでの入場。ド派手なパイロ(花火)にドーム全体が沸き立った。 第1R、井上はいきなりオーバーハンドの右フックを見せた。様子見は必要ないという意思表示かのようだった。ところが、その大胆な出方は裏目に出る。右アッパーを浴びせたあと、ネリのカウンター左フックをもろに浴びてしまったのだ。 完全なクリーンヒットにあの井上が尻もちをついた。井上自身まさかのキャリア初ダウンだった。『パンテラ』(黒豹)の異名通り、ネリはここで逃すかとばかりに猛打を浴びせたが、井上は逃げ切った。 2R開始前、井上は声をあげて気合を入れ直した。ネリの脅威の一端を味わった東京ドームの大観衆は、左フックが出る度にどよめいた。だが、ネリの左フックを待っていた井上は、スウェイでかわすや見事な左カウンターで逆襲。ダウンを奪い返した。 それ以降ネリは勢いを失った。ネリのパンチが空を切り、井上のジャブ、左ボディが刺さる。すっかり興に乗った井上は「アゴを打ってこい」のゼスチャーから即座に右ストレートを放つ。歓声が爆発した。 5R、額を突き合わせての打ち合いの中、井上の稲妻のような左フックで2度目のダウンとなったネリ。6R、井上はネリの底力を見たいのか、手を出さずに打たせ続けたが、「読み切った」とばかりに右ストレート。 ネリはロープを背にしたこともあり、まるでダンシングフラワーのように身体をバウンドさせながらマットに崩れ落ちた。劇的なTKOでの終幕だった。