SUVのT-Rocやワゴンのゴルフ・ヴァリアントにも設定されるフォルクスワーゲンの「R」が意味するものとは?その走りをワインディングで確かめる!
ワゴンボディでもその走りはまさに「R」……ゴルフRヴァリアント
真打ちゴルフR 20Yearsに乗る前に、ゴルフRヴァリアントにも試乗した。 ここで見るべきはワゴンボディのバランスの良さで、背の高いT-Rockに対して、走りは一枚上手な上質さを備えていた。 それはまずシンプルに、物理の法則だ。 ゴルフR ヴァリアントのスリーサイズは全長4650mm×全幅1790mm×全高1465mmと、T-Rock R(4245mm×1825mm×全高1570mm)に対して、長くて細い。ホイルベースは2670mmだから、80mmも長いことになる。逆を言えばT-Rock Rはそのノッポでショートなボディを、ワイドトラックとシャシーワーク、そして4MOTIONの制御によってよく安定させているといえる。 こうしたディメンジョンが与える安定性は、まずピッチングの少なさに表れる。SUVボディに比べて低重心かつ、ロングホイルベースだからアクセルのオン/オフに対する動きが滑か。引き締まった足周りでも乗り心地が重厚に保たれており、素直に「いいクルマに乗っているな!」と思える。 そして走らせれば、非常に高いレベルでドライバーに応えてくれる。 320psにまで高められた「EA888 evo4」ユニットの加速は、トルキーにして伸びやかだ。そしてここに4WDの蹴り出しと7速DSGの機敏な変速が加わることで、その魅力がさらに引き出される。低速では荒々しく唸りながらも、回すほどに切れを増して行く素晴らしい4気筒ターボだと思う。 操舵フィールは乗り心地と同様、しっとり重厚。スポーツモードでダンピングを固めてもしなやかさは失われず、ならばとRモードを試して、走りの深みにはまれる楽しさがある。 引き締められた足周りは、ブレーキングでそのフロント荷重をシッカリと受け止めてくれる。ブレーキリリースと共にハンドルを切って行くと、お手本通りに決まるターンインが気持ちいい。 ゴルフR ヴァリアントの見所は電子制御油圧多板クラッチで後左右輪のトルクを適宜配分する「Rパフォーマンストルクベクタリング」だが、その制御は予想よりいい意味でコンサバティブだった。 ターンインを終えてアクセルを徐々に踏み出すと、グーッと回り込むようにトラクションを与えてくれる。ターンインで向きを変えて行く後輪操舵よりも、ターンミドルからアクセルオンで曲げて行く分だけ挙動は穏やかだ。 また低μ路で積極的に向きを変えて行くドラビングや、クリップに向けてアクセルを踏み込んで行ける中高速コーナーの方が、その制御はわかりやすいのかもしれない。ともあれ難しいことを考えなくても、クルマとしては非常によく曲がる。 ゴルフR ヴァリアントはそのロングホイルベースと、リアセクションのイナーシャ(慣性重量)を、4MOTIONの制御が非常にうまく使いこなしており、回頭性の良さと安定性の高さが、とても高いレベルでバランスされている。 そのステイタス性はもちろんだが、今となっては少なくなったスポーツワゴンとしても、選ぶに足る1台だと思えた。 ゴルフRヴァリアント ・Specification ボディサイズ:全長4650mm×全幅1790mm×全高1465mm ホイールベース:2670mm 車両重量:1600kg エンジン:1984cc 水冷直列4気筒DOHC16バルブ・インタークーラーターボ 最高出力:320ps(235kW)/5350rpm-6500rpm 最大トルク:42.8kgm(420Nm)/2100rpm-5350rpm 燃料:ハイオク56L トランスミッション:7速DSG サスペンション:Fマクファーソンストラット/R4リンク ブレーキ:F/Rベンチレーテッドディスク タイヤ・ホイール:235/35R19(225/40R18) 価格:704万8000円
山田弘樹