アギーレ後任監督候補は「モチベーター」
スポーツ紙ごとに取り上げられる候補者が異なるなど、百花繚乱というよりも錯綜状態にあると見られていたサッカー日本代表の次期監督選定作業が新たな展開を見せている。 昨夏のワールドカップ・ブラジル大会でアルジェリア代表を躍進させたバヒド・ハリルホジッチ前監督が最有力候補に浮上したと、複数のスポーツ紙が報じた。状況が整えば近日中に霜田技術委員長が再渡欧して正式なオファーを行うようだが、交渉事には流動的な部分も多いため、元デンマーク代表MFのミカエル・ラウドルップ氏、鹿島アントラーズをJ1史上初の3連覇に導いたオズワルド・オリヴェイラ氏も候補者リストに名前を連ねていると見られる。 ハリルホジッチ氏はボスニア・ヘルツェゴビナ出身の62歳で、同国出身のイビチャ・オシム元日本代表監督と親交が深い。ワールドカップにはブラジル大会のほかに、旧ユーゴスラビア代表FWとして1982年のスペイン大会に、コートジボワール代表監督として2010年の南アフリカ大会に出場している。 ユベントスやバルセロナ、そしてレアル・マドリーでスーパースターとして活躍したラウドルップ氏は現在50歳。ワールドカップには選手として1986年メキシコ、1998年フランスの両大会に出場したが、代表監督を務めた経験はない。2014年からはカタールのレフウィヤSCの指揮を執っている。 アントラーズを率いた5年間で6個のタイトルをもたらした64歳のオリヴェイラ氏は、サッカー選手としての経歴がない。大学卒業後にフィジカルコーチの道を歩んだ後に、49歳にして母国ブラジルの名門コリンチャンスの監督に就任した異色のキャリアの持ち主で、現在はパルメイラスを率いている。 かつて「東欧のブラジル」と呼ばれた旧ユーゴスラビアの流れを受け継ぐハリルホジッチ氏。同じヨーロッパでもコンチネンタル系のラウドルップ氏。そして、これまでにも日本サッカー界に大きな影響を与えてきたブラジル路線のオリヴェイラ氏と、候補者のバックボーンは三者三様だ。 指導者としてワールドカップを経験したのはハリルホジッチ氏だけで、UEFAチャンピオンズリーグでの采配経験を問えば誰もあてはまらない。日本サッカー界との接点でいえばハリルホジッチ氏はほぼ皆無。ラウドルップ氏は現役晩年の1996年から1997年序盤にかけて、ヴィッセル神戸でプレーした。オリヴェイラ氏については、あらためて言うまでもないだろう。 一見すると無定見で候補にあがったように思える3人には、実は共通項がある。チーム内の一体感を高め、選手たちの士気を高めてピッチへ送り出す「モチベーター」としての能力がある点だ。