クリスマスケーキのイチゴが品薄に 長崎・雲仙市の農家「予想はるかに超えた暑さだった」
クリスマスケーキや贈答用としてイチゴの需要が1年で最も高まる師走。競り値は最大2倍ほどに上がり、農家にとっては稼ぎ時だが、今年は記録的な猛暑の影響で生育が遅れて出荷が間に合わない事態となっている。JA島原雲仙(長崎県島原市)の取扱量は昨年の半分にとどまっており、全国的にも同じ傾向にあるという。栽培農家は「例年よりも2週間の生育遅れ。年を越すと単価が安くなる」と表情を曇らせる。 【写真】色づきの遅れたイチゴの実を手にするイチゴ農家の木下さん 雲仙市国見町のイチゴ農家、木下信平さん(35)は就農3年目。ハウス12棟24アールで、香りが良く甘味と酸味のバランスに優れた品種「恋みのり」を栽培する。11月中旬から翌年6月初旬までの間、1株当たり4、5回の収穫に臨む。 年末のこの時期は贈答用に大粒の実を、ケーキ作りなど業務用の需要に合わせて小粒の実をそれぞれ出荷する。今年は暑さの影響で9月に花芽の元になる部分ができる「花芽分化」の条件が整わず、実がなるタイミングが合わなかった。 木下さんは「高温対策はしたが、予想をはるかに超える暑さだった」と振り返る。生育は例年の1週間遅れだった昨季よりもさらに1週間遅れているといい、「値の高い時期なのに2、3割ほど出荷量が減るだろう」と嘆いた。 JA島原雲仙によると、12月10日前後から1週間程度はイチゴの競り値が最大2倍ほどに上がる最需要期となる。ただ、同JAが取り扱う1日当たりの出荷量は、昨年の半分程度にとどまっているという。 需要のピークに供給が追い付かないため、イチゴが品薄状態になるのは必至だ。島原市内で菓子店を営む松田俊司さん(55)は「うちは契約農家から仕入れているので数量は確保できると思うが、値上げを求められている。想定以上に高かった場合でも、商品には転嫁できない」と話す。 (本山友彦)