新聞に軽減税率を適用へ「特別扱い」は妥当なのか?
2017年4月からの消費税増税に伴う軽減税率の議論は、自公両党の合意で16日に決着、食料品と並んで「定期購読で週2回以上発行される新聞」も対象に含まれることになりました。条件に当てはまる政党機関紙を発行する公明党の意向はもちろん、「民主主義を支える基盤だ」と適用を強く求めていた新聞業界の主張が反映された形です。しかし、メディア環境が大きく変化する中でこの「特別扱い」は納得できるものなのでしょうか。現場の記者や識者に聞きました。 【図】新聞は生き残れるのか? 新聞社経営の実態は?
現場の記者からも異論
日本新聞協会は長年、「知識への課税強化」に反対する姿勢を表明、今年10月には大阪で開いた新聞大会で「軽減税率を導入し、新聞購読料に適用するよう強く求める」特別決議を採択していました。 筆者は大会に出席した業界関係者から、12月初めには「新聞への適用はもう既定路線だ」と聞かされました。しかし、各紙を読んでもそうした報道は見当たりません。少なくとも「加工食品もか、外食もか」と日々刻々と伝えられた食料品に比べると、新聞に関しては詳しい議論の過程や反対意見がほとんど報じられないまま、唐突に決定に至った印象があります。 こうした経緯に加え、相次ぐ新聞社の不祥事やインターネット、スマートフォンの普及によるメディアの多様化などが、「なぜ新聞だけ特別扱いなのか」という市民の疑問に結びつくのでしょう。若手の記者からも「この扱いはおかしい」「読者の信頼を失ってしまう」との声が聞こえてきました。 渦中にいる大手紙の政治部記者は、現場の雰囲気を含めてこう本音を明かします。 「軽減税率の線引きなんて政治そのもの。民主主義や活字文化など、新聞がいくらもっともらしい理屈を付けても、結局は政治的駆け引きや経営優先だと思われてしまう。公器と言いつつ『新聞ありき』に誘導していいのかと、与野党双方の政治家から嫌味を言われる始末で、情けない」 ただし、この記者は直接、軽減税率の取材には携わってはいないこともあり、「今回のことで取材がやりにくくなるようなことはまったくない。現場がやってくれと頼んだわけではないので、嫌味を言われたとしても受け流すだけ」と割り切ってもいました。