冬月(深澤辰哉)は生きている? モラハラ夫の「父親放棄宣言」がもたらすものは 『わたしの宝物』2話
明かされるモラハラ発言の“背景”
なぜ、宏樹は美羽に、こうもつらく当たるのか。その背景が少しずつ明るみに出始めた。 彼は勤務先で、いわゆる「都合の良い人」扱いをされており、待遇は決して好ましいものではない。給与面では申し分ないのかもしれないが、お人よしすぎる(あるいは、外面を気にしすぎる)性格が悪い方向に作用しているのか、上司はもちろん後輩からも存在を軽んじられている。 宏樹は小さなストレスが日に日に積み重なり、呼吸が乱れ出社できない朝もあったようだ。そこまで彼を追い詰めている苦しみ、むなしさ、やるせなさから救ってくれるのは、かつて、汗だくになった時に美羽から差し出された一枚のハンドタオル。妻への愛情が枯渇したわけではないことが、些細(ささい)なシーンからも伝わってくる。 宏樹にとって美羽の存在は、社内で媚(こ)びへつらい、場が上手くまわるように気を遣っている自分自身を思い出すきっかけになってしまい、つらいのだろう。こうしたままならなさが、そのまま美羽の人格までをも否定するような言動に直結してしまっている。 だからといって、妊娠したことを告げた美羽に対し、いわば「父親の役割放棄宣言」までしてしまうのは、理解しにくい。まだ自分の子どもではない事実を知る前にもかかわらず、「金は出すけれども育児をするつもりはない」スタンスを表明することに、どれだけの意味があるのか。 宏樹は、たまたま声をかけられた喫茶店のマスター・浅岡忠行(北村一輝)に誘われ、一杯のコーヒーに癒やされる。人間は、身体だけではなく心にも“青タン”ができてしまう、といった比喩から「たった15分。人間ってさ、それだけで青タン一個ぐらい消せるんだぜ」と、コーヒーを味わう価値を説く浅岡。そんな彼に呼応するように、宏樹は、自分がどれだけ美羽の心に青タンをつくっているかを自戒しているシーンもあった。 しかし、宏樹の「父親放棄宣言」は、また新たな青タンを、美羽の心にこしらえることになるのでは。