中国の対外直接投資、ASEANとアフリカ向け急増 製造業や資源に積極投資、西側諸国向けの投資は減少
中国の対外直接投資が、東南アジアとアフリカに向けシフトしている。 9月24日に中国商務省、国家統計局、国家外貨管理局が共同発表した2023年版の「中国海外直接投資統計公報」によれば、同年の対外直接投資の伸び率が最も高かった地域はASEAN(東南アジア諸国連合)とアフリカだった。それとは対照的に、アメリカ、EU(欧州連合)、オーストラリア向けの直接投資は軒並み減少した。 【写真】アフリカのギニア内陸部の鉄鉱石を沿海部まで輸送する鉄道の建設現場 中国の2023年の対外直接投資は総額1772億9000万ドル(約25兆4833億円)に上り、前年比8.7%増加。その規模は2016年(1961億5000万ドル)と2021年(1788億2000万ドル)に次ぐ過去3番目だった。
世界各国の対外直接投資全体に占める中国の比率は11.4%と、前年より0.5ポイント上昇。国別ではアメリカ、日本に次ぐ第3位だった。 ■アフリカ向け投資は2.2倍 中国の対外直接投資の行き先を地域別に見ると、ASEAN向けが規模と伸び率の両面で目立った。具体的には、2023年の直接投資額は251億2000万ドル(約3兆6107億円)、前年比の伸び率は34.7%を記録した。 ASEANの国別ではシンガポール、インドネシア、ベトナム、タイ向けの投資額が大きく、業種別では製造業向けが(ASEAN全体で)91億5000万ドル(約1兆3152億円)と最大だった。
また、投資規模はまだ小さいものの、目を見張る伸びを示したのがアフリカ向けだ。2023年の直接投資額は39億6000万ドル(約5692億円)と、前年の約2.2倍に急増。国別ではニジェール、南アフリカ、アンゴラ、モロッコ、コンゴ共和国など鉱物資源が豊富な国が目立った。 中国の対外直接投資の統計データを読むうえでは、留意すべき例外もある。「一国二制度」をとる香港向けの投資が、統計上は対外投資の扱いであることだ。
2023年の中国から香港への直接投資額は1087億7000万ドル(約15兆6344億円)と、対外直接投資の総額の6割強を占めた(訳注:香港は中国の対外直接投資の中継点になっており、最終的な投資先を把握するのは難しい)。 もうひとつ、中国独特の集計と言えるのが、広域経済圏構想「一帯一路」の沿線国向けの直接投資額だ。中央アジア諸国や南シナ海・インド洋・地中海東部の沿岸諸国が含まれており、2023年の直接投資額は407億1000万ドル(約5兆8516億円)と前年比31.5%増加した。