映画『青春18×2 君へと続く道』藤井道人監督インタビュー──「いままでもこの先も、自分を投影しないもの・できないものは僕には撮れないなと思います」
日本と台湾の合作映画『青春18×2 君へと続く道』の藤井道人監督に訊いた。 【写真を見る】シュー・グァンハン、清原果耶、道枝駿佑をチェック!(全16枚)
藤井道人のクリエイティブ論とは?
『余命10年』『パレード』から『新聞記者』『ヤクザと家族 The Family』まで幅広く手掛けてきた藤井道人監督が、自身初となる国際共同プロジェクトに臨んだ。台湾の紀行エッセイを映画化した『青春18×2 君へと続く道』は、18年前の台湾と現在の日本を舞台にした切ないラブストーリー。大学進学を控えるジミー(シュー・グァンハン)が日本人旅行者のアミ(清原果耶)と出会い、バイト仲間として交流していくなかで惹かれていく。しかしアミの帰国に伴い離ればなれになってから18年後、日本を訪れたジミーは鈍行列車に乗り、アミの故郷を目指す旅に出る。 自身の祖父の出身地である台南での撮影を経験し、先行公開された台湾でのプレミアを終え、次なるプロジェクトである大型時代劇の撮影に入った藤井監督。その合間を縫って行われた本インタビューでは、彼の過去と現在をつなぐクリエイティブ論を紐解いてゆく。 ──『青春18×2 君へと続く道』は一足先に台湾で公開されてスマッシュヒットを記録中です。藤井監督は現地でのプレミアにも登壇しましたが、盛り上がりはいかがでしたか? ずっと立ちたかった場所ではありましたが、熱量や自分たちを歓迎してくれている気持ちを肌で感じて圧巻でした。映画に対する期待を持ってくれている方々、シュー・グァンハンや清原果耶ちゃんを好きな人たちが集まっていて、「僕たちにとっての特別な時間は台湾の人たちにとってもそうだったんだ」と感じられてとても嬉しかったです。フィジカルだけでいうとホテルと映画館の往復でしたが、観客の皆さんに会えたことが素晴らしい体験となりました。 ──急遽サイン会も開かれたと伺いました。 かしこまったものではなく、例えばエレベーターの扉が開いて鉢合わせた瞬間に皆さんがサインを求めに来てくれて、僕がたまたま2、3分待ちの時間があったので、そこで対応しました。 ──それだけ熱量が高い証拠ですね。20代の頃に台湾に営業に行ったと伺いましたが、直近ではNetflix 映画『パレード』も日本のみならず海外でもヒットしています。藤井監督の中での海外や世界への意識は変化しましたか? 僕は国籍は日本人ですが、アメリカで育ち、台湾のクオーターという自覚もあります。ずっとアイデンティティ不在のまま映画業界に入り、20代で台湾に留学をするなど目線は常に外に向いていた気がしています。でも映画は一人で作るものではありませんし、「いつかチームで」と思っていたものが今回叶いました。日本をけん引してくれる映画人はたくさんいらっしゃいますが、自分はその背中を見てついていくというよりは、自分で開拓していきたい・自分の信じる道はどこなのかと考えてきたつもりです。『パレード』は確かにNetflix のお陰で全世界に届きましたが、自分で足を運んで海を越えた仲間たちと何かを作るのは今回がはじめてでした。 ──『DIVOC-12』内の「名もなき一篇・アンナ」ではロン・モンロウを起用するなど、段階を踏んでたどり着いた印象はあります。 やはり“田植え”が必要でした。台湾留学時に現地のプロデューサーにプレゼンをするなど、そうした営業活動は様々な場所でやってきて、その都度ミュージックビデオやコマーシャル、ショートフィルムの仕事につながってきました。いま改めて思うのは、当初から僕自身がブレておらず、「やりたいものはノンバーバルでボーダレスな作品です」というベースを持ちながら日本で仕事をしてきたこと。河村光庸さん(『新聞記者』『ヤクザと家族 The Family』『ヴィレッジ』のプロデューサー)たちと作り上げてきた映画の流れとはまた別軸にある、自分のライフワークとして、そうした想いは一貫しています。 ──「ブレない」という部分ですと、本作でも演出方法自体は特に変えずに臨んだと聞いています。 やりたいことと得意なこと、求められることは必ずしも一緒ではなく、たまに一緒になる瞬間があるから楽しいのですが、往々にしてそれは1回目にしかないのです。映画を初めて作った瞬間や何かの節目の1回目しかその快感を得られないため、あまり同じジャンルの作品を作りたくないという意識が強いのですが、『青春18×2 君へと続く道』においてはピタッとハマった感覚がありました。