【報知映画賞】新人賞はペアで 15歳・越山敬達「成長痛でひざが痛くて」 13歳・中西希亜良「いつか海外作品に」
今年度の映画賞レースの幕開けとなる「第49回報知映画賞」の各賞が25日、発表された。新人賞は「ぼくのお日さま」(奥山大史監督)で、映画初主演した越山敬達(こしやま・けいたつ、15)と、演技初挑戦の中西希亜良(きあら、13)がペアで受賞した。みずみずしい演技と、儚(はかな)く美しいアイスダンスシーンで魅了した。 【画像】「報知映画賞」受賞者一覧! * * * 劇中では、あどけなさの残る少年少女だったふたり。昨年2~5月の撮影当時、越山より背が高かった中西は「いつの間に抜かされちゃった」とちょっと悔しそうに目線を上へ。越山は「撮影から15センチ伸びて、成長痛でひざと腰が痛くて…」と心身ともに伸び盛りだ。 雪国の小さな街を舞台に、きつ音のある小学6年生タクヤ(越山)と、中学生さくら(中西)がアイスダンスでペアを組む物語。越山は、ペアでの受賞に「ふたりでと聞き、うれしさ倍増でした。監督にも感謝です」と胸いっぱいの表情。中西は「びっくりして言葉を失っちゃった。その後は、一日中ずっとにこにこしていました」と初々しく喜びを表現する。 「4歳からスケートを習っていた」共通点が、宝石のように純真な煌(きら)めきを持つふたりをスクリーンに引き合わせた。中西は自身が通うスケートリンクの「ヒロイン募集」の貼り紙を見てオーディションに参加したが、演技は初心者。「何もできず、悔しくて帰り道に大泣きしました」。それでも非凡な魅力を見いだされた。 越山は6歳から子役として活動。スケートの基礎はあったが、アイスダンスは本作が初挑戦で数か月かけて特訓した。「音に乗せて滑るのが初めてで、(中西に)引っ張ってもらいました」。中西は「上達がすっごく早かった」と目を丸くする。 事前に台本は渡されなかった。越山は「だからこそ作り込むことなく、自分=タクヤになれた。楽しいシーンは心から笑って幸せで…」と自然と役と一体になった。中西は「お芝居は、コーチ役の池松壮亮さんにも導いてもらいました。本当に優しくて“お日さま”のような人です」と“恩師”に感謝した。 ある出来事をきっかけに距離ができてしまう2人は、ラストシーンで再会する。実際に2か月ほど空け、雪が解けた時期に撮影した。 越山「あのシーンは大苦戦して、20テイクくらい撮って途中で涙目になっていました。セリフを言ったりもしたけど、結局は息の吸い方、心の決め方だったのかなと思っています」 中西「久しぶりに会う気まずさで、どんな顔をしたらいいか分からず心が痛かったです。でも試写を見て、いろんなことを想像できるシーンだなと思いました」 日本映画に確かな一歩を刻んだ越山は、「これまで新人賞を受賞された皆さんのように、表現者としてもっと大きくなりたい」と背筋を伸ばす。父親がフランス人で、フランス語など4か国語が堪能な中西は「お芝居も続けて新しい自分を見つけたい。いつか海外作品に挑戦できたら」と夢を描いた。(奥津 友希乃) ◆ぼくのお日さま アイスホッケーが苦手なタクヤ(越山)は、リンクでフィギュアスケートを習う少女さくら(中西)に心を奪われる。コーチの荒川(池松)の提案で、タクヤとさくらはアイスダンスでペアを組むことになる。奥山監督は本作で、第77回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に史上最年少で選出された。 ◆越山 敬達(こしやま・けいたつ)2009年4月21日、東京都生まれ。15歳。スカウトを経て6歳から芸能活動を開始。23年、映画「スイート・マイホーム」(齊藤工監督)でスクリーンデビュー。同年、BS―TBSドラマ「天狗の台所」にメインキャストとして出演。EBiDAN NEXTでアーティスト活動や、「ニコ☆プチ」でモデルを務めている。 ◆中西 希亜良(なかにし・きあら)2011年6月16日、東京都生まれ。13歳。4歳からフィギュアスケートを始める。9歳からシングルと並行して練習を始めたアイスダンスでは、全日本フィギュアスケートノービス選手権大会に出場経験を持つ。24年、「ぼくのお日さま」で女優デビュー。日本語のほか英語、フランス語、韓国語を話すマルチリンガル。 ▼新人賞 選考経過 1回目投票で満場一致で越山と中西に決定。「二人が創り上げた感動のラストに涙が止まらない」(見城)「その時期にしか見られない、お二人の透明感や一瞬を切り取ったような本当にきれいな映画。将来性にも期待」(荒木) ◆選考委員 荒木久文(映画評論家)、木村直子(読売新聞文化部映画担当)、見城徹(株式会社幻冬舎代表取締役社長)、藤田晋(株式会社サイバーエージェント代表取締役)、松本志のぶ(フリーアナウンサー)、YOU(タレント)、LiLiCo(映画コメンテーター)、渡辺祥子(映画評論家)の各氏(五十音順)と報知新聞映画担当。
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