鹿児島県に伝わる幻の楽器「天吹」の「誰も聞いたことがない」途絶えた曲を音大講師が「復元」…2年かけ
どういう曲かは見当が付かなかったが、その後に伴奏なしで歌うカセットテープの存在を知ったこともあり、22年に渕上さんに復元できないか相談した。「音楽の専門知識があり、理論的に裏付けられた曲を作ってくれるのでは」という期待からだ。
特徴ある演奏方法
渕上さんは、「誰も聞いたことがない曲を、いかに天吹らしい曲にするか」に苦心しながら、7曲の構成を分析。なめらかに指をずらして音程を上下させるなど演奏方法に西洋楽器にはあまり見られない特徴があることに着目した。
依頼から半年後に制作した曲は、白尾さんから、曲の構成も演奏方法も「天吹らしくない」と厳しい指摘を受けた。助言も踏まえて改めて作り直し、今年10月に完成した。
次世代へ
今月10日、鹿児島市で開かれた同好会の演奏会で、白尾さんが「稚児出れ」を披露。集まった約50人が聴き入った。出席した一人で、20年以上の天吹の演奏歴がある同好会副会長の赤崎紳一さん(65)は「違和感のない、8曲目にふさわしい曲ができた」と話す。
白尾さんは「曲の制作を通して、既存の7曲の音楽的な分析と理解につながった。天吹に新しい光を当て、次世代につなげる取り組みだった」と話す。渕上さんは「天吹が伝わる鹿児島の方から曲を認めてもらい本当にうれしい。さらに魅力を広めていきたい」と意気込む。
◆天吹=布袋竹を利用し、表に四つ、裏に一つ穴を開けて作る約30センチの縦笛。小鳥がさえずるような高い音が特徴。室町時代から歴史があるとされ、鹿児島県の無形文化財(芸能)に指定されている。