《連載:検証 2024衆院選 茨城》(上) 自民、小選挙区負け越し 逆風 「王国」揺さぶる
「まさかこんなに逆風が強いとは思わなかった」 選挙戦最終日の26日、有権者への「最後の訴え」を終えた自民前職の陣営関係者は憔悴(しょうすい)していた。 1日に石破政権が発足。石破茂首相は就任後の最短日程で衆院選に踏み切った。派閥裏金事件のダメージを最小限に抑える狙いがあったが、党の公認を巡り「政治とカネ」の問題が再燃した。選挙戦終盤には、非公認候補が代表を務める政党支部に多額の活動費を支給していたことで批判を浴びた。 新政権の支持率は低調と言えた。「大事な選挙を前に一体どうなるのか」。陣営関係者は吐き捨てるように言った。 茨城県内選挙区は3勝にとどまった。「最重点区」の1、6、7区はいずれも敗退。「重点区」とした3、5区のうち、5区は比例復活も逃した。 各陣営は昨年から派閥裏金事件の釈明に追われた。国会会期中も週末や大型連休に地元入りし、支援者らに頭を下げて回った。選挙中は、茨城県に関連する議員がいないことをアピール。石破首相や岸田文雄前首相らが次々来県し、候補者のクリーンさを強調した。 必死のてこ入れも効果は限定的だった。報道各社の情勢調査で全国的に苦戦する可能性が報じられると、1区の自民前職、田所嘉徳氏の陣営は「なすすべがない」と自嘲気味に話した。 連携する公明は高い集票力で自民候補を支えてきた。見返りに比例での公明票上積みを目指す「バーター協力」を展開したが、逆風のあおりを受けた。比例北関東で目標に掲げた「3議席」は維持したものの、うち1議席は国民民主の比例登載候補者が足りなかったことで得られた議席だった。 小選挙区で敗れた4人のうち3人は、当選4回以下の候補者。2009年の政権交代を経験せず、党内では「苦しい選挙を知らない世代」とされる。 党県連の白田信夫幹事長は27日夜、小選挙区で3勝4敗と負け越した要因について「本人の努力が5割、政治とカネが4割、不景気が1割」と分析。強固な後援会組織をつくり、地域ごとのニーズをくみ取る重要性を指摘した。 今回大勝した陣営の県議は「(前回選挙から)3年間、もっと言えば初当選から数十年間、どれだけ地域のために活動してきたか。信頼関係があれば逆風に耐えられる」と胸を張る。一方、小選挙区で苦戦した県南の陣営は「安定した戦いができるのは、人の入れ替わりが少ない鹿行と県北だけだ。ほかは浮動票も多く、〝風〟の影響を受けざるを得ない」と分析する。 民主党政権が誕生した09年以来の苦戦に揺れる「自民王国」。党県連の海野透会長は、党本部に今回選の「総括」を求めるとした上で、「来年の参院選、知事選に影響が出るかもしれない。早急に対応を練る」と険しい表情で話した。 茨城県内選挙区で自民前職と野党系候補が激戦を繰り広げた衆院選が終わった。各党の戦いを振り返る。
茨城新聞社