「生活保護世帯の子」も“大学”へ行けて「バイト」もできる… 近年充実した「公的サポート」の中身とは【行政書士解説】
「貧困」が深刻な社会問題としてクローズアップされるようになって久しい。経済格差が拡大し、雇用をはじめ、社会生活のさまざまな局面で「自己責任」が強く求められるようになってきている中、誰もが、ある日突然、貧困状態に陥る可能性があるといっても過言ではない。そんな中、最大かつ最後の「命綱」として機能しているのが「生活保護」の制度である。 【画像】生活保護受給世帯・受給者数の推移 しかし、生活保護については本来受給すべき人が受給できていない実態も見受けられる。また、「ナマポ」と揶揄されたり、現実にはごくわずかな「悪質な」不正受給がことさら強調されたりするなど、誤解や偏見も根強い。本連載では、これまで全国で1万件以上の生活保護申請サポートを行ってきた特定行政書士の三木ひとみ氏に、生活保護に関する正確な知識を、実例も交えながら解説してもらう。 今回は、生活保護を受けている世帯の子が大学等に通うために、経済面で公的サポートを受けられる制度の内容を紹介する。決して「成績優秀者」でなくても、大学等で学べる道は開かれている。三木氏は、そのようなサポートの制度があることによって、生活保護の状態を抜け出し、自立して生きていくことができるようになるのだということを、多くの人に知って欲しいと語る。(5回/全8回) ※この記事は三木ひとみ氏の著書『わたし生活保護を受けられますか』2024年改訂版(ペンコム)から一部抜粋し、構成しています。
「生活保護を受けながら」大学に通うことはできないが…
現在の生活保護制度では、生活保護を受けながら大学に通うことはできませんが、生活保護制度上の「世帯分離」をした上で、生活保護を受けている家族と一緒に住みながら大学に通うことは可能です。 この場合、本人は生活保護を受けられません。しかし、住宅費は家族と同居ならかかりませんし、後述するように、大学の授業料等の減免を受け、自身の生活費は奨学金制度を活用すれば、勉学に集中することができます。 「うちは生活保護だから……」と、夢をあきらめることのないように、皆さんの学びを応援する制度があるのです。 厚生労働省も、生活保護世帯の中学生・高校生向けに、進路支援に関する情報を分かりやすく紹介したパンフレット「〇カツ! あなたの〇カツ応援します」を公開しています(「〇カツ!」でインターネット検索すれば出てきます)。 なお、生活保護を抜けた場合のデメリットとして、医療費が無償でなくなることが挙げられます。しかし、一時的に大学生が病気やけがで多額の医療費がかかるような事態になれば、休学して生活保護を受けることも考えられます。
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