なぜ日本フィギュアがNHK杯男女シングルSPトップ3を独占できたのか。異例の快挙を紐解くキーワードは“一体感”
世界女王も号泣した盟友のガッツポーズ
それに対して坂本は、普段同じ練習拠点で切磋琢磨する盟友の好結果が何より気持ちを熱くさせた。 「会場に向かうバスの中で(男子の)結果は知ったんですけど、最初は点数だけ把握して、そのあとに順位を見て演技を全員分見たんですけど、何より一緒に練習してきた壷井選手が3位に食い込んだので、本当にそこが自分の中では嬉しかったポイントでした。演技を見て、最後のガッツポーズで泣きました」 試合に向けてメイクをしている最中だったが、「アイライナーがなかなか引けないぐらい手が震えてたりとかしてたんですけど。本当に自分もやらなきゃってすごい思った。すごいいろんな人からパワーをもらった。身近な人が結果を残して頑張っているのが、より力になっている」と話し、スケーター仲間の頑張る姿が大きな力を与えてくれ、自身のパフォーマンスをさらに引き上げてくれたと強調した。 個人競技であるフィギュアスケートは、たったひとつのミスで大きく順位が変わってしまう残酷な面を持つスポーツだ。しかし、それぞれの日本選手のコメントを聞くと、まるでチームスポーツかと錯覚してしまうような強い一体感が感じられる。海外選手を含め、誰もが素晴らしい演技ができることを願い、全力を尽くし、仲間に活力を与えるような演技をする。異例中の異例とも言えるショートプログラムでの男女トップ3独占は、まさに日本チームが一丸となって掴んだ結果ではないだろうか。 すべてが決着する勝負のフリー。どんな結果になろうとも、最後までしっかりと見届けたいと思う。 取材・文●湯川泰佑輝(THE DIGEST編集部)