父・中村勘三郎を亡くして12年。「父が死んだら変わってしまうんだ」と思ったこともあったけれど、できることを必死にやって【勘九郎×七之助】
◆持ち味が違う二人の息子たち 七之助 勘太郎はもう13歳になったんだっけ。 勘九郎 2月22日で13歳。長三郎は10歳になった。父は勘太郎が1歳の時に亡くなったから、二人とも生前の父を知りません。でも、父の映像は、初舞台の時から残っています。二人は笑いながらずーっと見ている。 七之助 僕は《叔父バカ》で、もう可愛くって可愛くって仕方ないので、稽古の時も二人をほとんど叱れない(笑)。厳しいことは兄に任せて、ひたすら、じ~っと見守っている感じです。 勘九郎 2月の歌舞伎座公演で、勘太郎は『猿若江戸(さるわかえど)の初櫓(はつやぐら)』で初主演をつとめますが、今までより台詞量も多い。 七之助 長三郎は初めて『連獅子』に挑戦するね。 勘九郎 そう。稽古の時には、二人とも本当に一日、一日、集中していた。前日に言われたことを自分なりに分解して、翌日の稽古で出してきているのを見ると、いい姿勢だなと思います。厳しい稽古の時もあるけれど、二人とも楽しむ心を失わないのは見ていてわかるし。 七之助 勘太郎は普段から9割は、歌舞伎のことを考えている。小さい頃の映像を見ると、物心つかないうちから見得を切るなど、僕たちを驚かせるような歌舞伎小僧。歴史も好きで、父の生まれ変わりじゃないか、という感じがする。
勘九郎 時々ふっと、父と同じ目をするよね。この間も、台詞を言いながらパッと睨んだ目が、父そっくりで。 七之助 そうそう。びっくりする。長三郎は本名が哲之(のりゆき)といいますが、突然「ノリワールド」が始まることがある(笑)。固まって身動き一つしなくなったり。変わったヤツというか、面白い感覚の持ち主。 勘九郎 普段はファニーな男だけど、稽古着を着て「お願いいたします」と言った瞬間から、別人格になる。スイッチの入り方がすごい。22年に宮藤官九郎さん作・演出の新作『唐茄子屋 不思議国之若旦那』を上演した時も、爆発力とイマジネーションがなかなかのものだった。 七之助 歌舞伎の新作は、一般的な演劇より稽古期間が短いけれど、その中で毎回、なにかしら思いついたことにチャレンジしようとするから。 勘九郎 長三郎はそういう真面目さ、歌舞伎に対する真摯さが父に似ている気がします。かわいそうな時代に生まれたなと思うのは、コロナでしばらく新年のご挨拶回りが禁止になっていたでしょう。おかげで二人ともこの4年ほど、お年玉をまったくもらっていない。(笑) 七之助 確かに。 勘九郎 そういえば昨日、長三郎が漫画『HUNTER×HUNTER』の「軍儀」のグッズを指さして、「2月の公演終わったら、これをもらおう」と、僕に聞こえるように言ってた。 七之助 アハハハ。 (構成=篠藤ゆり、撮影=岡本隆史)
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