「関税は最も美しい言葉」トランプ氏の原風景は1980年代か 貿易戦争に身構える世界 「トランプ2.0」の衝撃④
米国のトランプ前大統領が返り咲きを決めた今、トランプ氏の大統領選中の発言が世界各地で波紋を広げている。 【一覧でみる】「嫌な女」「気味悪い犬ころ」…近年注目を集めたトランプ氏の主な発言 「タリフ(関税)、それは最も美しい言葉だ」 10月中旬、企業幹部らが集まった公開インタビューでこう発言したトランプ氏。別の会合では「ラブ(愛)よりも美しい言葉だと思う」とも語り、聴衆の笑いと拍手を誘った。 海外企業をこらしめる―。これがトランプ人気を支える要因の一つであり、大統領としての力の源泉でもある。 ■「関税男」を自称、普遍的基本関税も 「タリフマン(関税男)」を自称するトランプ氏は、2017~21年の1期目に各国への関税を上げることで経済的圧力をかけ、通商交渉を優位に進めた。 日本には日本車への追加関税をちらつかせ、市場の開放を要求。欧州連合(EU)とも貿易摩擦を引き起こした。中国に対しては大規模な制裁関税を発動し、中国も報復関税で対抗した。来年1月からの2期目では、中国やEUなどとの「貿易戦争」再燃が危惧されている。 トランプ氏は「普遍的基本関税」の導入を提唱している。同盟国である日本や欧州諸国も含めた全ての国からの輸入品に10~20%の関税を課すという内容で、米国市場に輸出している海外企業にとっては大打撃となる。メキシコから輸入する自動車には100%以上の関税を課す考えも示し、米国内に工場を移すよう企業に迫っている。 最大の競争国である中国に対しては60%を課すと主張。台湾に侵攻した場合、「150~200%」の関税を課すと米紙に述べた。中国のシンクタンクは「トランプ氏の発言は世界経済にとって脅威だ」と警戒する。 トランプ氏の狙いは高い関税をかけることで、雇用と生産拠点を米国内に取り戻すことにある。「ぼったくり」をしてくる外国には、「目には目を」の精神で対処する―。同氏の主張はある意味で明快ともいえる。 ■ロックフェラー・センター買収の衝撃 執着にも似たトランプ氏の関税への思い入れは何に由来するのか。米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は、1980年代に日本企業が続々と米国内で勢力を伸ばし、「ソニーのウォークマンやトヨタの車が米国を埋め尽くした」ことがトランプ氏の原風景だと指摘する。