賃上げに沸く中、忘れてはいけないこと
「報道部畑中デスクの独り言」(第367回) ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム。今回は、「賃上げ」に沸く空気に隠れている「課題」について―
自動車・電機など大手企業の組合で構成される東京・日本橋の金属労協事務局。3月13日の集中回答日、ホワイドボードに各社の妥結金額が書き込まれました。この日は日本製鉄など組合の要求を超える回答もあり、例年にも増して明るい雰囲気が漂っていました。集中回答日を待たず組合の要求に満額回答する企業もありました。午後に開かれた記者会見は例年にも増して注目度が高く、新型コロナウイルスが落ち着いたことも相まって、多くの記者でごった返しました。
「日本経済の好循環を実現しうる原動力ともなる回答結果。日本経済をけん引する労使の社会的役割をしっかり果たしている」 会見で金属労協の金子晃浩議長(自動車総連会長)は回答の状況を総括しました。会見の時点では2024年以降で「群を抜いて高い水準」とも話しました。 そのほかの組合でも回答の結果を高く評価するコメントが聞かれました。 「社会的責任が果たせる水準。経済の好循環の一助になる」(電機連合・神保政史中央執行委員長) 「非常に歴史的な水準。中小の交渉に大きな勇気を与えてくれる」(JAM・安河内賢弘会長) 中小の組合が多いJAMの安河内会長は歯に衣着せぬコメントで知られています。そういう意味では異例の評価と言えますが、「価格転嫁そのものはまだまだ道半ば」と注文も忘れませんでした。 集中回答日の夕方には首相官邸で政労使会議も開かれました。 「昨年を上回る力強い賃上げの流れができていることを心強く思う」 岸田文雄首相はこのように評価した上で、「中小・小規模企業における十分な賃上げによって、すそ野の広い賃上げが実現していくことが大切、あらゆる手を尽くしていく」と述べました。 中小企業への期待は労使双方も一致するところです。