次の選挙は不出馬でも…二階俊博元幹事長が水面下で進める「世襲実現」のための老獪な狙い
「“お父つぁん”は大丈夫。“うちの村”は結束しているから」 次期衆院選に不出馬の意向を表明した二階俊博元幹事長(85)を心配する声に、武田良太元総務相(56)はそう答えているという。 【写真】すごい…二階元幹事長「SPに寄りかかりながら本会議場入り」も変わらぬ存在感…! 「お父つぁん」とは二階氏、「うちの村」とは二階派を指す。岸田文雄総理(66)が派閥解消宣言をしても、水面下で二階派は変わらず結束し、二階氏は元気だというのである。 自民党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金問題を受けた調査で、二階氏の政治団体は現役政治家最多の3526万円が政治資金収支報告書に不記載となっていた。派閥の元会計責任者と秘書は起訴されている。 「政治不信を招く要因となったことに、深くおわびを申し上げる。政治責任は監督責任者の私自身にあることは当然だ」 3月25日、二階氏は党本部で陳謝し、政治的責任を取るため、次の衆議院選挙に立候補しない考えを明らかにした。 「二階氏は歴代最長となる5年2ヵ月間、幹事長を務めた党屈指の実力者で、岸田総理周辺も処分については頭を悩ませていた。“一段重たい処分が出そうだ”とリークし、メディアを介して“こちらが処分を下す前にそちらで進退を決めてください”と水を向けることで、なんとか不出馬表明を言い出させた。自ら政治責任を取ったことで、党としては二階氏を処分しない方向です。派閥を解散され、不出馬に追い込まれた二階氏は忸怩たる思いでしょうが……」(ジャーナリストの鈴木哲夫氏) 次回衆院選で適用される「10増10減」に伴う区割り変更で、和歌山に3つあった選挙区は1つ減り、新1区と新2区となる。二階氏は新2区の支部長に決まっていたため、自民党和歌山県連は新たな支部長選考を進めることになる。 新2区を巡っては世耕弘成元参院幹事長(61)の「衆院鞍替え」の噂は過去に何度も取り沙汰されてきた。 しかし、一連の裏金問題で世耕氏には「離党勧告」処分が下された。8つに分かれる自民党規律規約の中で2番目に重たい処分だ。次回選挙は無所属での出馬となり、比例への重複立候補ができないため、選挙区で敗れれば復活当選もなく、そのまま落選となる。 鞍替えせず参院和歌山選挙区から出馬した場合、世耕氏は「苦戦しながらも当選はするだろう」と政治学者の天川由記子氏は分析する。 「世耕氏の衆議院への鞍替えの可能性は消えた。参院内でかつての力を取り戻そうにも、相当な時間を要する。二階氏は身を切りながらの不出馬宣言をしたことで、息子の世襲を押し進めるチャンスを得た」 新2区を巡っては、世耕氏の鞍替え出馬のほか、二階氏の公設秘書を務める長男の俊樹氏、あるいは三男の伸康氏への世襲など、様々な思惑が交錯している。現在、和歌山1区は日本維新の会の林佑美氏(42)が現職。自民党は参議院議員の鶴保庸介元沖北相(57)を1区の支部長として、この区の奪還を狙っている。 「二階氏の長男は’16年の御坊市長選に出馬するも惨敗。影響力は低下しました。三男は内々に『今回は辞退したい』と話しているようです。鶴保氏は1区の支部長に決まったので2区に移せない。では新2区に誰を立てるのか。考えられるのは、息のかかった地方議員を“ワンポイントリリーフ”で出馬させる。その任期中に支援者らと話し合って、後継者を絞り込む。そして次の次の衆院選で息子のどちらかに譲る――というシナリオです。ダイレクトに継がせるより、ワンクッション挟んだほうが、世襲批判も和らぐ」(前・天川氏) 二階氏は和歌山県議から国政に進出した「たたき上げ」の政治家だ。’93年には自民党を離党し、「小沢一郎の側近」として自民党を下野させた手腕もある。野党や霞が関にも幅広い人脈を築き、老獪に立ち回った。 「不出馬宣言しましたが、次の選挙まで任期は残っています。静かに余生を過ごす政治家ではなく、岸田おろしが活性化すれば暗躍する力は十分、残っている」(前出・鈴木氏) 故・安倍晋三元総理に「最も政治技術をもった方」と評された二階氏。秋の総裁選に向け、永田町に激震が走る“最後の一手”を隠していても不思議ではない。 取材・文:岩崎大輔
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