【電撃引退】藤田菜七子が残したもの ~あどけない表情に隠れた静かなる闘志~
そうして迎えた2019年最初のGIレース、フェブラリーSでコパノキッキングに騎乗し、JRA所属の女性騎手として初めてGIの舞台に立った。 まだ肌寒い2月半ば、筆者は彼女のGI初騎乗を見るために東京競馬場に向かった。デビューしてまだ4年目の若手騎手がGIの舞台に立てばたいていは緊張するものだが…… パドックで見た彼女からは緊張した様子は感じられず、レースで勝利することはできなかったが、直線で猛然と追い込んできて見せ場たっぷりの5着。 直線での追いっぷりはとても女性騎手とは思えないほど力強いものだった。 この経験で自信を付けたのか、藤田菜七子はこの年、年間ではキャリアハイとなる43勝をマーク。 第3回新潟開催では9勝を挙げて女性騎手として初めて開催リーディングを獲得し、12月にはカペラSでフェブラリーSでもタッグを組んだコパノキッキングに騎乗して勝利。JRA所属の女性騎手として初めてのJRA平地重賞制覇を果たした。
この後、2021年には古川菜穂、永島まなみ、2022年に今村聖奈、2023年は河原田菜々、小林美駒、そして今年は大江原比呂…… と藤田菜七子に続けとばかりに毎年のように女性騎手がJRAでデビューするようになり、その中で藤田菜七子は女性騎手のパイオニアであり続けた。 そして、競馬場には以前とは比べ物にならないほど若い世代のファン、特に女性ファンが増えたように思う。 思えば5年前のフェブラリーSのパドックには藤田菜七子を一目見ようと集まったファンが大勢いたが、その多くは若い世代の女性たちだった。 年長の男性騎手たちに混ざり、奮闘している彼女の姿は競馬場にやってくる若い女性ファンに強烈なメッセージとなったことだろう。 突然の引退は本当に残念でならないが、166勝という勝ち星以上にもっと価値があるものを彼女は競馬界に残してくれたと、筆者はそう感じている。 だからこそ、騎手・藤田菜七子の活躍をいつまでも忘れずにいたい。女性騎手のパイオニアとして9年間、奮闘し続けた彼女の姿を。 ■文/福嶌弘
■藤田菜七子 プロフィール
生年月日:1997年8月9日 身長:157.4センチメートル 体重:45.6キログラム 血液型:A型 星座:獅子座 初免許年:2016年 免許種類:平地 出身地:茨城県 所属:美浦 所属厩舎:根本康広 初騎乗:2016年3月5日 2回中山3日 2R ネイチャーポイント(2着/16頭) 初勝利:2016年4月10日 1回福島2日 9R サニーデイズ 重賞勝利数:1勝 年度 レース名 馬名 2019年 カペラS(GIII)コパノキッキング
テレ東スポーツ