【電撃引退】藤田菜七子が残したもの ~あどけない表情に隠れた静かなる闘志~
それはあまりに、突然の別れとなった。 10月11日、JRAの所属騎手である藤田菜七子は現役引退を発表。9年間の騎手生活にピリオドを打つことになった。 【動画】セクシー競馬ガール・雪平莉左が藤田菜七子、今村聖奈ら 目覚ましい活躍を見せる女性騎手を紹介 JRAの女性騎手として史上最多となる通算166勝を挙げ、日本人の女性騎手として初めて重賞を制するなどの目覚ましい活躍を見せてきた彼女だが…… 振り返れば、藤田菜七子は日本競馬界に新しい風を呼び込んでくれた存在だったと思う。
競馬とは関係のない家で生まれ育った彼女は小学校6年生のときに騎手になることを夢見て、中学卒業後には競馬学校へ入学。 2016年にはJRAでは史上7人目、2013年以来3年ぶりとなる女性騎手の誕生に大きく沸き、川崎競馬場で迎えたデビュー戦には各種メディアがこぞって取り上げるという異例の事態となった。 4月10日には福島9レースでサニーデイズに騎乗してJRA初勝利を挙げた際は女性騎手として約12年ぶりの勝利となったことも話題となった。 藤田菜七子がJRA初勝利を挙げた3日後、筆者は船橋競馬場にいた。この日のメインレース、マリーンCに騎乗する彼女を見るために。 パドックで見た彼女は競馬学校を卒業して間もない18歳の少女そのもの。それがクリストフ・ルメールや戸崎圭太、岩田康誠といったトップジョッキーと一緒のレースに出ているのだから緊張するのも無理はないが…… 降りしきる雨の中行われたレースでは顔を泥だらけにしながらも懸命に前を追いかけていた。まだあどけない10代の少女が見せた闘志は今でも筆者の記憶に残っている。 やがて藤田菜七子はローカル開催のレースを中心に騎乗数を増やし、存在感を増していった。 女性騎手ならではの当たりの柔らかさを生かした騎乗は確かにソフトだが、直線に入れば従来の女性騎手とは一線を画すほど、騎乗馬を力強く追って勝利をもぎ取るようになっていた。 デビュー2年目の2017年には得意としていた新潟芝1000m戦で行われた飛翼特別をベルモントラハイナで勝利し、女性騎手の年間最多勝記録を更新した上、初めてメインレースを制するという快挙も成し遂げた。 この年はさらに勝ち星を積み重ね、最終的には14勝を挙げた。 翌2018年、藤田菜七子は27勝を挙げて、JRA所属の女性騎手の通算勝利数で最多記録を更新しただけでなく、GI騎乗が可能となる通算30勝の壁を突破。