最悪「廃業」に追い込まれる病院が続出する…「マイナ保険証のオンライン資格確認」義務化で起きる恐ろしいこと
■私たちの生活に関わる大事なことなのに この数年、私たちの生活や国にとって重要な方向性を決める事項であっても、なにかと「閣議決定」という一部の人間のみが密室で決めてしまう手法が、ときの政権によって多用されていると感じるのは、私ばかりではあるまい。 そんな政権を忖度しているのか、メディアまでも「閣議決定」があたかも国の最高意思決定の場であるかのような報じ方をする現状に、大きな違和感をおぼえている方も少なくないのではなかろうか。 そして司法。建前では三権分立となっているが、今回の判決にかぎらず、ときの政権におもねる判決があまりにも目につき過ぎではあるまいか。司法がこの国に生きる人たちの権利以上に国の主張を擁護するなら、私たちはどうやってわが身を守れば良いのだろうか。 本件とは直接関係ないが、お隣りの韓国では尹錫悦大統領が突然「非常戒厳」を宣言するという暴挙に出た。大統領というたった1人の人間が、その時々の恣意的な判断で、すべての国民の権利を厳しく制限できてしまうことに、底知れぬ恐怖をおぼえた方もいるだろう。 ■気づかぬ間に「義務と制約」が増えている この国に生きる人たちにたいする「義務を課す」「権利を制限する」といった権力の行使は、その必要性と重要性、緊急性、そしてほかに手段がないといったことなどを慎重に議論したうえで、「義務と制約」の影響を受けるすべての人たちに十二分に説明し、理解を得て、しかるべきプロセスを経て制定された法律を根拠とすべきであるし、法制化されたのちも、その行使は必要最小限であるべきだ。 今回の「義務化」は、尹大統領の非常戒厳に比べれば、極めて小さな権力の行使かもしれない。「医療機関には負担かもしれないが、私たちには関係ないや」、さらに「対応できない医療機関はつぶれて当然」と思われる方もいるだろう。 だがこうした小さな小さな蟻の一穴を「私には無関係」などと見過ごしているうちに、気づいたときには、真っ当な議論とプロセスを無視したごく少数の権力者たちの気まぐれな判断だけで、義務と制約が課され、がんじがらめにされてしまっているかもしれない。そうなってからでは、もう手遅れなのだ。 ---------- 木村 知(きむら・とも) 医師 1968年生まれ。医師。10年間、外科医として大学病院などに勤務した後、現在は在宅医療を中心に、多くの患者さんの診療、看取りを行っている。加えて臨床研修医指導にも従事し、後進の育成も手掛けている。医療者ならではの視点で、時事問題、政治問題についても積極的に発信。新聞・週刊誌にも多数のコメントを提供している。2024年3月8日、角川新書より最新刊『大往生の作法 在宅医だからわかった人生最終コーナーの歩き方』発刊。医学博士、臨床研修指導医、2級ファイナンシャル・プランニング技能士。 ----------
医師 木村 知