声優からレスラー転向の叶ミク 女子同士が闘う意味を知り、プロレスデビューでプロレスを痛感!
【WEEKEND女子プロレス#44】
「弱い自分を変えたい」との思いで声優にあこがれ、高校卒業とともに新潟から上京、その後ふとしたきっかけでプロレスを知り、プロレスラーになった叶(かなえ)ミク。堀田祐美子主宰のT-HEARTS所属となり、昨年9月、Sareee自主興行で本格的プロレスラーとしての第一歩を踏み出した。この4カ月余りで彼女は約20試合を経験、SEAdLINNNGやアイスリボンなどのリングで闘っている。声優活動からプロレスへの転向も「自分を変えたい」「強くなりたい」との思いが、身長149センチの彼女にとって大きなモチベーションになっていたという。 【写真ギャラリー】声優からレスラーへ転向した叶ミク(撮影:新井宏) 「もともとアニメ声とかには抵抗があるタイプだったんですが、中学3年生くらいのとき、まわりにアニメ好きの子が多くて、声優さんのラジオ番組とかもよく聴くようになったんです。それを聴いて、声で表現することのすごさを知ったんですね。それまで自分は感情を表に出すとか、自分を表現するとかがすごく苦手で、休み時間に誰ともしゃべらず教室の隅にいる感じだったんです。それが声による表現のすごさを知り、そんな自分を変えたいと思ったのが、声優をめざしたきっかけです」 高校卒業後に単身上京、声優の養成所に入所し訓練を積んだ。が、一年後に事務所のオーディションに落ちてしまう。それでも「厳しくて毎日のように泣いていた」日々を無駄にするわけにはいかない。あきらめずに演技の勉強を継続。そのなかでナレーションをはじめ、声の仕事をいくつか経験した。その過程で出逢ったのが、アクトレスガールズだったのだ。 「声優で言ったら大先輩で、独立して自分の事務所を持っている方とレッスンとかでお会いしたんですね。知り合ってから数日後に『プロレスやろうぜ!』と言われたんですよ。それまでプロレスは全然知らなくて…。でも、その事務所の先輩方数名がすでにアクトレスで活動されていたんです」 公演の映像を見せてもらい、アクトレスガールズとはプロレスの要素と演劇を融合させたパフォーマンスだと知った。 「殺陣のシーンでプロレスを用いている感じなんだよと言われて、お芝居の一環としてやってみたらどうかなって。ただ、最初に映像を見たときは正直ちょっと引いたんです。怖いと思ってしまったんですね。プロレスを見たこともないし、もちろんやったこともない。私にできるのかなって。それでもテニスとバスケをやってて身体を動かすのは大好きだったし、出逢ったらやってみようという精神がまさり、挑戦してみようと思いました。ダメならやめればいいし、とりあえずやってみようと。こんな機会そうそうないだろうし、事務所の先輩方が先にやられているという安心感もありましたね。それに、やるなら(先輩たちに)負けたくないとの思いもあり、アクトレスに入りました」 実際に練習に加わってみると、運動好きが功を奏して楽しくできた。「基礎体操やマットでの運動はけっこうできました」。ただし、受け身は初めての経験。これには苦労したという。「あんなに痛い思いをすることは日常ではないので、大変でした。でも受け身が取れないとデビューできないので、必死に練習しましたね」 そしてこぎ着けたアクトレスでのデビュー。しかしながら、入門時からすでにアクトレスはプロレス団体の看板を下ろしている。プロレスのようであってプロレスではない。ニックネームの「かなみっく」をリングネームとした彼女だが、デビュー当初は違和感を抱えながらリングに立っていたともいう。 「お芝居をしているというより、闘っている感覚でのデビューでした。不思議だったんですよね、ケンカでもないのになんで闘っているんだろうって。最初の頃はそんな疑問を持ちながらやっていた部分がありました。それで先輩に聞いてみたんですよ。どういう気持ちで闘っているんですかと。そうしたら『負けたくない気持ちや感情とかをお客さんは見にきてるから、それを伝えるために私はやってるんだよ』という答えだったんです。デビューしてから半年くらい経ってからですかね。そのあたりからほかのプロレスも見るようになって、女子同士が感情剥き出して闘っている。それを見て自分の闘争心というか、負けたくない気持ちが自分の中にも出てきた感じですね。それで、プロレスって強さだけじゃなく人気面だったり、ビジュアルとかも兼ね備えていかないといけない。すべてにおいて負けたくない、気持ちで負けたくないと思えるようになり、先輩の言ったことが理解できたんです」