相手と共に押し黙る…「典型的な営業」とはかけ離れた「不器用営業マン」が次々と契約を勝ち取った秘訣
地方のFラン大学卒で0から営業を始めた著者は、いかにして「日本一の営業」へと大変貌を遂げたのか? 「毎日が凄く辛い」「外回りをしている自分が情けない」...消極的に取り組み始めた営業の仕事が天職になるまでには、どんな心境の変化があったのか? 人と人との関わり合いである営業で得た「学び」には、どんなビジネスにも活かせるヒントが満載。仕事への向き合い方や他者の心の動かし方に迷うビジネスマン必読の話題作『コカ・コーラを日本一売った男の学びの営業日誌』(山岡彰彦著)から、内容を抜粋して紹介する。 【漫画】頑張っても結果が出ない…「仕事のできない残念な人」が陥るNG習慣 『コカ・コーラを日本一売った男の学びの営業日誌』連載第7回 『聞いていて思わず「ワクワク」してしまう…「気難しい」社内のトップ営業マンが重視する「お客様」との向き合い方』より続く
人は自分事で動く
営業の仕事でよく誤解されることの一つに「話が上手い人が好成績を挙げる」というものがあります。立て板に水の流暢なトークでさまざまな利点を述べ、相手を上手く説得することが営業担当者として最も重要なスキルのように見えますが、実際の現場では必ずしもそうではないことがわかります。 営業所には、その名の通り営業する部隊が集まっているのですが、ずっと同じメンバーでやっているとどうしてもやり方がマンネリ化してしまい、日々の活動に起伏がなくなってしまいがちです。 そこで会社も考えたもので、何かしらの強化期間を設け、梅雨明けだ、年末だ、といった適当なテーマを掲げ、よそから複数の選抜メンバーを営業所に招き、何々販売クルーといった即席の営業チームを編成して、我々に活を入れに掛かります。強化期間中は朝から所長の檄が飛び、一人ひとり「今日は絶対目標を達成してくるぞ!」と掛け声を上げ、いつもとは違ったプレッシャーを背負って二人一組のクルーが営業所を後にします。
寡黙な営業マンの古賀さん
その日、私のパートナーは古賀さんという方でした。松山の営業所から来た古賀さんはどちらかと言えば控えめな印象の方ですが、自販機の販売ランキングでは常に上位に名前が挙がる人で、私も彼と同行すると聞いた時は少し緊張したものです。 見込み客のところに向かってクルマを運転する私の傍らで、助手席の窓から普段とは違う街並みを眺めている古賀さんは、本当にどこかの物静かなおじさんといったふうで、車内での2人の会話もたいして弾みません。それでも、上手くかみ合わない言葉を交わしながらも、私は内心興味津々です。 飛び込み営業では相手がどんな人なのかわかりません。瞬時に「相手はこんな人だろう」とあたりをつけ、それに合った話し方をしつつ、相手が興味を引きそうなポイントを探りながら商談を進めていきます。私たちも2人で商談をスタートさせるのですが、どうも古賀さんと私との息が合いません。古賀さんは売り込んでいる相手にぽつりぽつりと言葉を並べるだけで、あとはほとんど相手の話を聴いて、ときどきうなずくだけです。彼の発する言葉は、新人の私が聞いてもたどたどしく、もう少し上手い言い回しがあるだろうと思ってしまうほどです。 しかし、相手の反応は違います。古賀さんの言葉を受け取ると、少し間をおいて返事をします。その返事の端々に柔らかな同意の言葉が混じっています。 その日は見込み客を10件ほど訪問したのですが、その半分ほどで契約をもらうという好結果を得ることができました。高額な自販機の契約です。なんとも不思議な気分です。