アメリカでは「テクノ・リバタリアン」が台頭も…日本の起業家がシリコンバレーでチャレンジしない意外な理由
“なぜシリコンバレーでチャレンジしないのか”
この4人を取り上げた理由は、 「イーロン・マスクは子どもの頃に周囲と馴染めず、アメコミやSFに夢中になり、スーパーヒーローものにハマっていた。ピーター・ティールはコミュ力が低いことに加えて同性愛者で、子ども時代はさらに疎外されていた。やはりファンタジーとSFが好きで、『指輪物語』三部作を繰り返し読んで暗記してしまったといいます。 2人はいずれもその高い能力によって、子どもの頃に憧れたSF的世界を実現しようとしていて、とても興味深いキャラクターです。グーグルのラリー・ペイジやセルゲイ・ブリン、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグもテクノ・リバタリアンですが、マスクやティールほどキャラ立ちしていない。 マスクらに続く第二世代としては、オープンAIのサム・アルトマンとイーサリアムのヴィタリック・ブテリンを、新しい世界をテクノロジーによってデザインしようとしているという意味で、テクノ・リバタリアンの象徴として取り上げました」 かたや、日本におけるテクノ・リバタリアンはいるのか。 「どうでしょう。日本にもベンチャー起業家はいますが、本書で取り上げたこの4人とはスケールがまったく違いますよね」 なぜ日本ではそうした人材が輩出しないのだろうか。 「論理的・数学的な能力が高い若者は、日本でも同じような世界観を持つようになるはずですが、だからといってシリコンバレーで勝負しようと思うわけではない。文京区本郷では東大のまわりにベンチャー企業が集まり“本郷バレー”と呼ばれていますが、そこの若い起業家に“なぜシリコンバレーでチャレンジしないのか”聞いたことがあります。答えは、“コスパが悪い”でした。 彼の先輩には、ゲームやアプリの会社を立ち上げてベンチャーキャピタルから資金調達し、数年で大手企業に売却して数億円や数十億円のお金を手に入れた成功者がたくさんいる。それに比べれば、世界中から天才が集まるシリコンバレーでの成功確率はあまりに低すぎて、まったく魅力がないそうです。 大卒で大企業に入り、定年まで40年間働いて得る生涯賃金はせいぜい4億円程度。20代でそれ以上のお金を稼げるのなら、ハイリスク・ハイリターンのシリコンバレーで第二のイーロン・マスクを目指すよりも、“ぬるい日本”でそこそこ成功するローリスク・ローリターンの戦略の方が現実的なのでしょう」