D2C苦境の時代 ラボグロウンジュエリーの ドーシー の成長を支える「収益性重視」と「独自の製品戦略」
ブランドマーケティングとパフォーマンスマーケティングの融合
ストラチャン氏は自身の経験から、過度な成長に注力するのではなく、ほとんど人の助けを借りずに無駄のないチームでブランドを運営することを選択した。ドーシーは正確な従業員数の公表は避けたものの、社内チームは「ビジネス見合った適切な成長率で成長している」という。 同氏はまた、ブランドマーケティングとパフォーマンスマーケティングの機能をひとつのチームに統合させた。以前の会社ではブランドマーケティングチームとグロースマーケティングチームがそれぞれ孤立しており、バラバラのマーケティング戦術を作ってしまっていると感じていたからだ。 ストラチャン氏のマーケティングへのアプローチにおけるもうひとつの重要な要素は、どの初回注文でも利益を上げることだ。多くのD2C新興ブランドは、顧客がまた戻ってくることを期待して初回注文で値引きをして、利益を犠牲にしてきた。特にジュエリーのような高額商品を扱う場合、そうした期待通りにはほとんどならないとストラチャン氏は指摘する。 「私たちはフルプライスのビジネスだ」とストラチャン氏は話す。ドーシーでも初期に値引きの実験はしてみたものの、今は初回割引やホリデープロモーションは一切実施していない。 ドーシーはインスタグラムやアフィリエイトマーケティング、プレス、Eメール、SMSマーケティングといった従来のチャネルを通じて顧客の大部分を獲得している。「これらは時期によって変動する」と同氏は言う。 「目標とするCACに基づいて顧客を獲得している限り、どのチャネルにも予算の上限はない」とストラチャン氏は話す。マーケティング予算は前年比成長率に基づいて毎年増額される。だが現在、同ブランドはどのチャネルでも赤字を出してはいないという。 数あるD2Cジュエリーブランドのなかでドーシーが突出した存在であるために、美的センスも大きな役割を果たしている。「私たちがすることはすべて、ジュエリーを文脈化することであり、同社はファッションの観点からそれに傾倒している」とストラチャン氏は語った。ほとんどのラボグロウンダイヤモンドを扱うブランドは、いわゆるエンゲージメントリングに焦点を絞っているが、ドーシーは現在そうしたジュエリーを提供していない。(しかし、今年後半に展開する計画はある) 季節感を重視するためドーシーでは年に20~30回の写真撮影を行っている。その写真の多くは、同ブランドアイテムの身につけ方に焦点を当てている。「私たちの最高傑作は、年に12回から20回撮影されている」とストラチャン氏は話す。ドーシーはユーザー生成コンテンツはあまり宣伝せず、その代わりにファッションに特化したクリエイターを起用している。 ブランド認知度向上への貢献でいうと、セレブリティも助けとなっている。ドーシーはセレブリティとのパートナーシップに一切投資していないが、ブランド設立初期からのファンであるスタイリストを通じて、レッドカーペットでの露出を獲得してきた。たとえばモデルのベラ・ハディッドは2022年、ファッション展覧会のオープニングイベント「メットガラ(Met Gala)」でドーシーのイヤリングを着用していたが、同ブランドがそれを知ったのはそのイベントのあとだった。そのほかのファンにはヘイリー・ビーバーやジャスティン・ビーバーがおり、ジャスティン・ビーバーは最近のツアーでドーシーのネックレスであるケイト(Kate)を着用していた。 シャネル(Chanel)やディオール(Dior)と仕事をしてきたラグジュアリーブランドアドバイザーのヴィクトリア・ブリンナー氏によると、若い買い物客にとって、ブランドイメージと知覚価値は高級品の購入決断時に大きな役割を果たすという。フォロワー数だけでなく、ソーシャルメディアでの強力なイメージと明確な商品ポジショニングは、特にオンラインジュエリーブランドがひしめくなかで、潜在顧客に信頼感を与えることができると同氏は話す。 とはいえ、「小規模なブランドであれば、セレブリティによるマーケティングは難しいだろう。ブランドを成長させるために、あまりにも多くの投資をしなければならないからだ」とブリンナー氏は指摘した。