徹夜の編集作業や有名Pのパワハラで追いつめられ...毎月一人は退職するテレビマンの過酷な労働環境
月の労働時間が400時間を超える
かつては長時間労働やパワハラが当たり前だったテレビ業界も、すっかり様変わりした。局の廊下には「働き方改革」を謳ったポスターが貼られ、NHKの朝ドラは日々の労働時間を短くするために余裕を持ったスケジュールで撮影されるようになった。ずいぶんクリーンな労働環境になってきたと耳にするが、テレビスタッフの働き方は本当に変わったのだろうか。実際に現場で働く制作会社のスタッフたちの声を聞いた。 【画像】伊藤沙莉、森田望智、ハ・ヨンスらが参加…大盛り上がりの朝ドラ『虎に翼』打ち上げ現場 今年、キー局の情報番組でADからディレクターに昇進したA氏は自身の労働環境についてこう嘆いた。 「ADの時は週に一度は必ず徹夜があった。もちろんお風呂は入れない。繁忙期の年末は、月の労働時間が400時間を超えることもありました。ディレクターになるとAD時代より雑用は減るものの、トータルの労働時間はあまり変わりません。日中に撮影をこなし、夜は編集スタジオにこもってオンエアに間に合うように必死で編集作業をする。長時間労働自体はそれほど変わっていないと感じています」 同じ情報番組で働くADのB氏が続ける。 「テレビマンの多くは、憧れの芸能人と一緒に仕事ができるということをモチベーションにしています。ところが、下積みのAD時代は演者と接する機会はほぼない。ディレクターになれば芸能人と打ち合わせをする機会ができるのですが、労働環境が過酷すぎてディレクターになる前に辞めてしまう人が少なくない。労働時間の長さはもちろん、いまだに残るパワハラ気質が原因です。私も某有名プロデューサーが、部下を𠮟りつけながら頭を殴っている場面に遭遇したことがあります」 ◆毎月1人以上が辞めていく テレビ業界の中でも「最もブラック」と言われるのが、バラエティ番組の現場だ。キー局のバラエティ番組のディレクターを務めるC氏は、「昔よりは楽になったのですが……」と前置きしたうえでこう嘆いた。 「以前は朝から翌日の昼まで編集所に缶詰めになって仕事をしていましたが、最近は終電で帰れるようにはなりました。ただ、翌日の早朝から仕事なので、ほとんどのスタッフが帰宅せず、局内の仮眠スペースで寝ています。通勤に時間を取られるよりも睡眠に充てたいというわけです。 今年3月に放送された『月曜から夜ふかし』(日本テレビ系)の中で利用時間が『10:00~34:00(朝10時~翌朝10時)』となっている編集所が映り込み、ブラックさが話題になったことがありました。ただ、あれは業界ではよくある光景。われわれは『こんなことで話題になるんだ』と驚いていましたね」 その一方で、キー局報道番組のディレクターD氏は「昔とは変わった部分もある」と言う。 「数年前までは、上司に無理難題を言われても逆らわず応えようとしていました。ただ、最近の若いスタッフはできないことはできないとハッキリ言う傾向がありますね。『先輩が帰らないと後輩は帰れない』という空気もいまだ残ってはいますが、若い子たちは気にせずに帰ったりする。働き方が変わりつつあるんだなと感じています。 ただ、いまだに徹夜はあるし、プライベートの時間をつくることが難しいので、私の制作会社では毎月1人以上は辞めていきます。人が少なくなると残っているスタッフの負担が大きくなるので、業界全体で一度働き方を見直してほしいと思いますね」 形だけの働き方改革ではなく、スタッフが健康に働ける環境をいち早く整えてほしい。 取材・文:富士山博鶴
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