本当に現代の話...!?「嫁の風呂は最後で、水滴は拭き上げて。食事は台所よ」田舎に嫁いだ彼女に浴びせられた義母の言葉
作家・ライターとして「現代のカップルが抱える問題」について取材をしてきた佐野倫子。人間関係が複雑化する現代において、男女間の問題もまた、入り組んでいるようです。 今回お話を伺うのは、所縁のないとある地方に嫁いだ春香さん。 「結婚前から、将来は義両親と同居すると聞いていました。でもいくつかの『計算』があって自分はなんとかうまくやれるだろうと思っていたんです。甘く見ていました……。令和の現代に、あんな結婚があるなんて」 そう語ると、ふつりと口をつぐんでしまった春香さん。疲れ切ってしまっているように見えました。一体何が彼女をそんなに疲弊させてしまったのでしょうか。詳しく伺いましょう。 取材者プロフィール 春香さん(仮名):35歳、2児の母。 利光さん(仮名):40歳、身内が経営する建設会社社員。
「小賢しい女はダメ」という呪い
「夫と出会ったのは地方都市の建設会社でした。私は短大を出たあと、どうにかして少しでも都会で就職したかったんです。でも東京はダメだと両親に言われて、実家と東京の中間の地方都市で就職しました。 今思えばダメと言われても、折れずに頑張って東京で就職先を探せばよかったと思うんです。でも当時は『女に学歴はいらない。小賢しい女は好ましくない』という時代遅れな価値観に知らずに染まっていて『短大がちょうどいい、就職は地方都市でもいいから結婚するまでは実家を出て自由を満喫しよう』と思っていました」 取材前の雑談のときから、春香さんにはふたつの顔があるような気がしました。 僭越ながら、インタビュー歴が長い筆者から見ると、春香さんは頭の回転が速く、とても気が利く方だという印象です。しかし、ご本人がおっしゃるようにそれを出すことには抵抗があるようでした。さまざまなことに気づいているけれど、言わぬが花……そう思っているような気配があります。 さて、新卒当時は首尾よく格安の寮に入れる建設会社に就職をした春香さん。そこで、5歳年上の先輩、利光さんに会いました。 「背が高くて、大学を出ていて、会社員で独身の適齢期の男性。それがその街では奇跡みたいな確率なんですよ。きっと東京のひとにはわからないと思いますが……。親類が強引に縁談を持ってきたり、お見合いさせたりというパターンが減っている今や、20代独身男性と自然に出会うってなかなかなないんです。そのせいもあって、すんなり付き合うことになって、おまけに出会って1年でプロポーズされたので、すっかり舞い上がっていました。 彼こそ運命の人! モードになっているので、『いずれ長男が産まれたら、実家を改築して同居する』『そのタイミングで親戚が経営している建設会社に転職する。将来はそこの役員になる』っていう話もむしろ『これって玉の輿!?』なんて思っていたんです」 気持ちはよくわかります。なにせまだ春香さんは当時20代前半。好きな人と結婚するという晴れがましさに、楽天的に物事を考えても無理のないことだと思いました。 しかしもちろん、ある程度人生経験を積めば想像がつきます。それは看過してはいけない条件でした。
佐野 倫子