55歳夫婦、子どもが独立したので「貯蓄2000万円」で引退を目指していますが、貯蓄は「月4万円」が精いっぱいです。現在の貯蓄額は「1000万円」なのですが、65歳での引退は難しいでしょうか…?
老後生活のための資金不足のため、65歳以降も定年後再雇用などで働き続ける人が増えてきています。65歳時点で完全に引退するために必要な資金は2000万円とも4000万円ともいわれますが、55歳時点で老後資金の不足が見込まれる場合は、10年間でどのようなことができるでしょうか。 ▼定年退職時に、「1000万円」以上の貯蓄がある割合は日本でどれくらい?
現状維持の場合、65歳時点での貯蓄額をシミュレーション
現在の状況が次のような家庭の場合、夫婦が65歳時点における貯蓄額をシミュレーションしてみます。 夫婦の年齢:55歳 現在の貯蓄額:1000万円 毎月の貯蓄額:4万円 現状維持のまま10年経過した場合、貯蓄額は1000万円+(4万円×120ヶ月)=1480万円まで増えることになりますが、目標としている2000万円には500万円以上届きません。 この時点で完全に仕事から引退し、年金以外の収入がなくなるとすると、以降は生活費の不足分を貯蓄から取り崩していくことになります。その場合、夫婦がさらに25年後(90歳)まで存命であると考えると、月々に貯蓄を取り崩せる金額は以下の通りとなります。 1480万円÷(12ヶ月×25年)=約4万9333円/月 一方、令和元年度に金融審議会市場ワーキング・グループが提出した報告書「高齢社会における資産形成・管理」によれば、高齢夫婦無職世帯の平均的な姿で見ると、毎月の赤字額は「約5万円」となっています。これは、今回のシミュレーションで算出した月々の貯蓄取り崩し額である「約4万9333円」とほぼ一致しています。 今回のモデルケースにあてはめれば、夫婦が90歳になるタイミングで、ほぼ資産を使い切る状況になると予想されます。余裕がないわけではありませんが、最近のインフレ状況も考えると、やや心もとない状況であるといえるでしょう。
今から投資を始めた場合、65歳時点での金融資産額は?
10年後、65歳時点での引退に向けて「65歳時点での資産額2000万円」を目指すためにはどのようなことが今からできるでしょうか。 大きく分けて「家計の見直し(節約)」と「収入の向上」を行うことで、10年後の資産額を520万円積み増すことが求められます。しかし、仮に「節約」のみで520万円の貯蓄を増やそうとする場合は、月々の支出を4万3000円以上(520万円÷120ヶ月=4万3333円)切り詰める必要があるため、かなり生活の苦しい家計になってしまうと思われます。 筆者としては、10年間という期間があるなら、「節約」「投資」「副業などでの収入増」をすべて行うことで資産額増をねらうことをおすすめします。ここでは、モデルケースの家庭が現在所有する1000万円の貯蓄の一部と、毎月の貯蓄を積立投資に回した場合、10年後の資産額はどのようになるかをシミュレーションしてみます。 シミュレーションの条件は、次のように設定します。 ・普通預金の利率は、年0.1%とする ・投資対象は、年利回り3%(取引手数料などは考えに入れません)の投資信託とする ・投資を始めるタイミングで、1000万円の貯蓄から300万円を一括投資する ・毎月の投資額は、4万円(月々の貯蓄額)と6万円(月々の貯蓄額に加え、家計の見直しや収入増により2万円を追加する)の2パターンを考える この条件での10年間の資産額推移は、図表1の通りになります。 図表1