子育てとキャリアの両立は可能? 子連れファッションデザイナーたちの挑戦
幸い状況が変わりつつある心強い兆しも見える。近年では多くのファッションハウスが従業員に充実した有給の出産パッケージを提供する。例えば「バーバリー」は2021年にイギリス平均の6週間に対して、18週間の有給産休を設けると発表した。
キャリアの絶頂期にあったデザイナーが、子育てに専念するために身を引いた例としては、2001年から2017年にかけて「セリーヌ」を成功に導いたフィービー・ファイロが挙げられる。彼女の3人の子どものうち下の2人の息子、マーロウとアーサーはファイロが最も成功を収めていた時期に生まれており、「セリーヌ」は彼女の妊娠を理由に2012年のショーをキャンセルしたこともある。数年間に渡って二つの役割をやりくりした後、ファイロは子育てだけに専念するために退職を決断。末っ子が11歳になった6年後の昨年10月30日、彼女は自身の名を冠したブランドでカムバックを果たした。その最初のコレクションで最も話題になったのは「MUM」(お母さん)という文字の連なった、約4,500ドルのチャンキーなネックレスだ。
当然、自分のファッションブランドを運営することは母親にとっては数え切れないほどのメリットがある。育児などに合わせて労働時間を柔軟に調整できるようになるし、自分が好きなことを仕事にすることで、子どもたちに素晴らしい模範を示すことができるだろう。
「Rixo」の共同創設者で2人の子供の母親であるヘンリエッタ・リックスは、第2子の出産後、12週間の産休を経て仕事に復帰したところだ。幸せな偶然とも言うべきか、彼女の共同創設者であるオーラ・マクロスキーは産休に入ったばかりだが、これは女性が経営するブランドだからこそ、うまくやれているのだと感じずにはいられない。「二つの役割を引き受けるには、慎重にそれぞれの責任を取ってやりくりしていく必要があります」とリックスは語る。「個人的な代償はありますが、家族とビジネスの両方を育てることで得られる充実感が私の原動力になります。子どもができたことで、息子たちが素晴らしい人生を送り、彼らに仕事と目的を持つことの大切さ理解してもらえるよう『Rixo』を成功させたいという思いがさらに強くなりました」