アギーレ続投で生じる3つのリスク
ひとつ目はアジアカップに臨む代表選手23人の士気だ。 アジアカップという大会がもつ独特の雰囲気を、カタールで開催された前回大会を経験しているFW本田圭佑(ACミラン)はこう語ったことがある。 「その場しのぎというか、根性みたいなところで優勝しましたけど、格下と戦っても一筋縄じゃいかないというか、いろいろなハプニングがあった」 サッカー界で最もタブーとされている八百長の疑惑をかけられ、場合によってはごく近い将来の交代もあり得る指揮官の下で、果たしてチームが一枚岩になれるのか。 原専務理事はメンバーが集合し、千葉県内で合宿をスタートさせる29日にも、アギーレ監督あるいは技術委員会の霜田正浩委員長から状況を説明する舞台を設ける考えを明らかにしている。 「サッカーの世界に入ってから初めてこのような問題に巻き込まれたことを、監督は残念でしかたがないと言っていた。いましなければならないのは、選手たちの不安を払拭して、落ち着かせること。まだ起訴されていないわけだから、現状を正しく、丁寧に説明する以外に方法はないでしょう」 もっとも、刻一刻と状況は変わっていく。合宿中や1月2日のオーストラリア入り後に新たな動きがあれば、その都度説明する場が設けられることになる。アジアカップ期間中の公式会見では、海外メディアからも八百長に関する質問を受けるだろう。目の前の試合に臨む上での選手たちの集中力やチームの一体感がそがれても、決しておかしくはない状況が生まれることになる。 ふたつ目は日本サッカー界全体が受けるイメージダウンだ。 起訴されて裁判が始まれば、結審までに数年を要することもあるとされる。アギーレ監督が日本とスペインを頻繁に行き来するだけでも印象が悪く、かつ代表監督業務にも支障をきたす上、最終的に有罪を下されば、日本サッカー界が築き上げてきたクリーンなイメージは瞬く間に崩壊する。 八百長監督の下でプレーしてきたというレッテルは、日本代表のマッチメークにも大きな影を落とす。巨額のスポンサー料を毎年支払っている協賛企業も、心中穏やかではないだろう。何よりもサポーターやファンたちが、日本代表チームにネガティブな感情を抱いてしまう。観客動員も含め、サポーターの代表離れが起きてしまう可能性もゼロではない 質疑応答では、将来に禍根を残さないためにも、アギーレ監督に自発的に辞任をうながすことも日本サッカー協会として必要なのではないかという意見も飛んだ。解任ならば億単位の違約金が発生するが、辞意を表明しての退任ならば最小限で済む。 しかし、ここでも原専務理事はやや色をなしながらアギーレ監督を擁護している。 「こうなったときにこうする、とこの場で言うことはできない。まだ受理されてもいないし、(受理されたら)どのような手続きが踏まれ、どのくらいの頻度で呼ばれ、それが監督業務にどのような影響を与えるのかを見極める。それによっていろいろなことを考えたい」