アギーレ続投で生じる3つのリスク
日本代表監督が八百長疑惑で告発されるという、前代未聞の事態に揺れている日本サッカー協会の定例理事会が18日、東京・文京区のJFAハウスで行われた。冒頭で大仁邦弥会長が理事に対して一連の騒動を陳謝するとともに、来年1月9日に開幕するアジアカップ・オーストラリア大会でもハビエル・アギーレ監督に引き続き指揮を執らせる方針を伝えた。 理事会終了後には原博実専務理事と、日本サッカー協会の法務委員長を務める三好豊弁護士が記者会見。アギーレ監督が告発された日本時間15日深夜以降で、初めて公の場に姿を現した原専務理事は、同監督の嫌疑が固まっていない状況下では問題はないと何度も繰り返した。 「最悪の事態になったときにどうこうするのではなく、我々がいまやらなくてはならないことは、今後どのような流れになっていくか、正しい情報を収集することだと認識している」 問題視されているのは、2011年5月に行われたサラゴサとレバンテのリーガ・エスパニョーラ最終戦。アギーレ監督が率いるサラゴサが2対1で勝利して、土壇場で1部残留を決めた。しかし、試合前にサラゴサの会長からアギーレ監督や主力選手の口座に大金が入金され、それらがすでに1部残留を決めていたレバンテの選手たちへの買収資金となった疑いがかけられている。スペイン紙の報道では、試合が操作されることをアギーレ監督も了承していたとされている。 スペインの司法制度は日本と異なり、スペイン検察庁反汚職課からの告発を受けたバレンシア裁判所が受理した時点で本格的な捜査が始まる。その過程で行われる予備審でアギーレ監督を含む41人が証人として喚問され、嫌疑が十分であれば起訴され被告となる。スペイン紙の報道では、告発から10日間ほどで受理されるとの見方が有力となっている。 しかし、理事会後の記者会見は将来的に「クロ」となった場合のリスクを指摘するメディアに対して、原専務理事が現時点で「シロ」であることを何度も強調。完全な堂々巡りのまま、約50分間に及んだ質疑応答を終えた。 たとえば、契約前にいわゆる身体検査をなぜしなかったのか、世界中に恥をさらしているのではないのかという質問に、原専務理事はやや色をなしてこう答えている。 「この疑惑が報じられたのが今年の10月。(八百長の)告発自体がスペインでは初めてのケース。疑惑をかけられたことがすべて悪いのか。本人が『わからない』と言っているのに、(クロと)決めつけていいのでしょうか」 アギーレ監督の招聘に奔走したのが、当時技術委員長を兼任していた原専務理事だった。任命責任を避けるかのような対応にも映るが、実際に問題を先送りにしていくことで日本サッカー界は3つのリスクを抱えると言っていい。