返還から25年、習近平主席がマカオに求める「カジノ依存」からの脱却
■ 「カジノのマカオ」から「横琴のマカオ」へ 習主席がマカオのカジノを嫌うもう一つの理由は、欧米列強による植民地支配を想起するからだ。経済の要衝だった清朝時代の広東省が、ヨーロッパが持ち込んだアヘンと賭博によって衰退したという歴史観だ。 これは想像だが、今回の2泊3日のマカオ視察で、最も疎(うと)ましく習主席の目に映ったのは、乱立するアメリカ資本のカジノだったのではないか。 例えば、フェリーターミナルにほどちかい特等地に、金ピカの「金沙娯楽場」が聳(そび)え立っている。ドナルド・トランプ米次期大統領への長年にわたる最大の支援者と言われるアメリカ資本のカジノ「SANDS」だ。 2002年に当時の江沢民主席が、外国資本のカジノを解禁。「ブッシュ共和党政権へのプレゼント」と言われた。それでやって来たのが「SANDS」で、スロットマシン1250台、テーブルゲーム740台というマカオ最大の巨大カジノを、2004年にオープンさせたのである。 だが、来月の2期目のトランプ政権発足とともに、米中関係が悪化していけば、アメリカ資本のカジノ群は「人質」のようになっていくだろう。 ともあれ習主席は、そのような「カジノのマカオ」から「横琴のマカオ」へと、「脱皮」させようとしている。 2018年に習主席は、前述の「グレーターベイエリア」構想をぶち上げた。その一環として、2021年から、広東省でマカオに隣接する珠海の南側(マカオの西側)に、「横琴コーポレーションゾーン」(粤澳深度合作区)の建設を始めた。マカオの3倍の面積を経済特区にして、「第2のマカオ」を造るという壮大な計画だ。 今回、習主席は建設現場を視察し、ひときわ満足げな表情を見せた。来月から予想される米中関係の激変に、「勝算」は見出せたのか?
近藤 大介