習近平指導部の対米認識は甘いのではないか|9・11から20年:絶対の「自由と民主」が去った世界で
危機対応を左右する大統領の「人間力」
plavi011/Shutterstock.com
9・11米国同時多発テロ事件の発生から20年が経過した。米国と世界に大きな影響を与えたこの大事件は、米中関係にも大きな影響を与えた。この事件さえなければ、あの時点で、米国の対中姿勢に、かなりの修正が行われていた可能性があったからだ。修正が行われなかった結果、世代交代が進むごとに、中国側の対米認識はかなり甘くなってきた気がする。毛沢東、周恩来、鄧小平などは、朝鮮戦争を戦い、米国の「怖い顔」を知っていた。江沢民、胡錦濤は、それでも米中の国力差が大きく、米国の主張に中国も配慮した対応をした。それが、爪を隠し時間を稼ぐ「韜光養晦(とうこうようかい)」の外交政策の求めるものであったからだ。 現在の指導部は、1972年の米中共同声明以来の米国の「優しい顔」しか見てこなかった。米国がもう一つの「怖い顔」を持つことをあまり自覚していないように見受けられる。「優しい顔」とは、米国が中国の立場に最後は歩み寄るという意味だ。例えば人権問題についても、提起しないか、提起しても、そのうちウヤムヤにする。台湾問題でも、最後は中国の立場に一定の配慮をして、事案を終わらせる。だが「怖い顔」の米国は、自分の言うことを聞かせるために遠慮なく腕力も使うし、あきらめない。米国の地位が挑戦を受けていると判断したときは、特にそうなる。日本も、 日米貿易摩擦 のときに経験した。 現在の中国指導部の対米観が甘いと感じる理由は、米中関係の歴史をたどるとよく分かる。
本文:4,718文字
購入後に全文お読みいただけます。
すでに購入済みの方はログインしてください。
宮本雄二