「クールジャパン」は356億円赤字から再起動できるのか? “政府が本当にすべきこと”を考える
クールジャパンの再起動についてThe HEADLINE編集長の石田健氏は「政府が支援をすること自体は良くないわけではない。例えば韓国ではK-POPやドラマなど様々なコンテンツが輸出されて成功している。2000年前後に韓国ではこうした分野を政府がもっとサポートしていこうと決めて関係省庁が支援してきた経緯がある。しかし、日本を見てみると、クールジャパン戦略は少なくともファンドとしては累積赤字があり、投資リターンも出ていない。反省点もかなり多いと思うので、過去の失敗の検証をしないままの再起動ではなく、少し立ち止まってみる必要はある」と指摘。 そもそも、「クールジャパン」は世界から「クール(かっこいい)」と捉えられる(その可能性のあるものを含む)日本の「魅力」。と広く定義されている。もう少しターゲットを絞って支援を強化することはできないのだろうか? 石田氏はメリハリの効いた支援の在り方を提言する。 「コンテンツを作るフェーズと届けるフェーズの2つがあると思うが、どういうものが流行するか、という目利きを政府が行うことは難しい。むしろ、プロモーションのサポートや人材の採用など、届けるフェーズを頑張るべき。投資先についても、もう少しここが流行っているから重点的に…という視点は持った方がよいのではないか。例えばインバウンドの成功は明らかであるため、必ずしも『輸出』という考えではなく、訪日外国人が楽しめるコンテンツや場所をプロモートすればいい。現状、東京と京都など一部だけに観光客が集中しているが、他にも楽しめるところがあると伝える。例えば埼玉には大きなアニメの施設があるが、東京に来た観光客が足を伸ばさないのはなぜなのか? これを解決すべく、観光庁・文化庁と、クールジャパンを担っている経済産業省がもう少し横断的に手を取り合うべきだ」 クールジャパン機構の累積赤字は356億円に上っているが、政府は「波及効果や呼び水効果など全体としての政策的効果は果たしている」と評価した上で、「民間だけでは十分に集まらない中長期的なリスクマネーを必要とする案件に投資している」などと説明している。 これに対し、石田氏は「リスクマネーは民間のベンチャーキャピタルや投資家も拠出している。だからこそ、必ずしも政府がやる必要はない。むしろ、芽が出始めたところに追加で予算を投じて伸ばしていくことが政府の役割だ。投資は一発で大きく回収できるモデルがあるため、必ずしも年次で赤字が出ることは悪いことではないが、果たして投資はうまくいったのか、リターンは返ってきたのかを厳しく見る必要がある」と分析した。 ゲームやアニメなど日本のコンテンツの海外市場規模は2022年に4.7兆円となっている。政府の目標としては、これを2033年までに20兆円規模に、関連産業全体では50兆円に成長させるとしているが、今後は何が重要になるのか? 石田氏は「アニメを見て日本食に興味を持って日本に訪れるなど、コンテンツの波及効果は非常に大きく、日本の独自性を出しやすいため、ここをしっかり支援していくことは大賛成だ。だからこそ、過去の反省を活かせば人材育成や資金の出し方などより良い政策ができるのではないか」と期待を示した。 (『ABEMAヒルズ』より)