“日本で最も消滅が近い村”で目撃した過疎の実態 群馬県南牧村はなぜ高齢化率ワースト1位になったのか
地域おこし協力隊は、都市部から過疎地に移住した隊員が、地場産品の開発や農林水産業などに従事しながら、その地域への定住や定着を図る取り組みだ。2009年度から開始し、各自治体が隊員を任期付きの公務員として雇うなどしたうえで、活動経費などの一部を国が助成している。 鰐渕さんは「これまでの村の隊員は10人ほどだろうか。非常によい制度で、なければ私もこの村に来ることはなかった」と説明する。「地域のつながりが多く、人がいいのが一番」と村の魅力を語り、今後も住み続けるという鰐渕さんの存在は、村の移住促進政策が成功したケースと言えそうだ。
喫茶店を後にして、県道沿いにあった道の駅「オアシスなんもく」に立ち寄った。この施設もMINNAなんもくが運営し、現在10人ほどの職員が働いている。 売店では数人の高齢者が買い物をしており、特産であるこんにゃくや野菜が売られていた。店内の会話が耳に入ってくる。 「最近、中学校と小学校が一緒になったんですよね」「そうなんですよ。村にまだ何とか学校が存続しているのは嬉しいんですけどね」 道の駅からほど近い場所に、「なんもく学園」という真新しい標識が立っていた。児童・生徒数が減った村立南牧小学校と南牧中学校が統合される形で、1~9年生が所属する義務教育学校として今年4月にスタートした。現在の児童・生徒は合計20人にとどまる。
近づいてみると、学校の児童だろうか、校舎前に腰掛ける2人の子どもが目に入り、甲高い話し声だけが静かな構内に響いていた。 ■村長が語る「地方創生」の現在地 午後1時頃、村役場を訪問し、長谷川最定(さいじょう)村長(71)から話を聞いた(村長インタビューの全文はこちら)。南牧村出身の長谷川村長は、村役場の職員を経て、2014年に村長選で初当選し、現在3期目だ。 長谷川村長によると、村は急傾斜地が多く、水はけのよい立地条件から、高度経済成長期まではこんにゃく芋の生産で高収益を上げた。しかし農業の機械化が進むと、こんにゃく芋の価格は下落。平地が少なく、交通の便も悪い土地柄もあって、他の農業への移行といった新産業創出や産業誘致もままならず、時代が進んだ。