「仕事と家庭」両立しようと疲弊する人の根本原因 禅僧が解説「疲れや不安を手放す」生き方
では、どうしたらいいのか。 この問いに対して著者は、比較をやめ、盛ることもやめ、自分以上でも自分以下でもない「ありのまま」の自分を生きることが大切だと説いている。そこで、1日10分でもいいので、「自分は、本当に生きたい人生を生きているのか」と自問自答する時間を持つべきだともいう。 その結果、「他の誰でもなく、自分の人生を生きている」と思えたのであれば、それだけで上出来だということだ。 他人と比較する理由など、どこにもありません。私たちに幸福をもたらすのは「盛る」ではなく「足る」のほうです。お釈迦様も、ご臨終前の最後の教えとして次の言葉を残しています。覚えておいてください。
「足ることを知っている人は、たとえ地べたに寝るような生活をしていても、心は安らかで幸せを感じている。しかし、足ることを知らない者は、天上の宮殿のようなところに暮らしていても、満足ということを感じられない。足ることを知らない者は、どんなに裕福であっても、心は貧しい」(70~71ページより) ■「徹する」と楽になる 周囲の期待や望みに応えようとすると、大量のタスクを背追い込むことになりかねない。しかも現代社会においては、「マルチタスク」が常態化してもいる。たとえば、「昼休みにもデスクで仕事をしながら食事をとる」というような光景も決して珍しくはないかもしれない。
しかし実際のところ、マルチタスクほど脳を疲れさせるものはない。複数のことを同時に処理しようとすれば、かえって集中力や生産性が低下する可能性も否定できないだろう。「あれもこれも」と複数のタスクを同時進行させることは、必ずしも得策ではないのだ。 禅が説くのはマルチタスクの正反対、ただ「ひとつ」に徹することです。それができれば、あらゆる雑念が消えるからです。(中略)仕事をするときは、ほかのことを一切考えず、仕事に徹する。食事をするときは食事に徹する。家族といるときは団らんに徹する。徹するだけで疲労感はぐっと軽減します。(73ページより)