東京・恵比寿10億円不動産を他人が相続 認知症「要介護5」なのに書き換えられた遺言書
産経新聞が取材で入手した介護関係資料によると、地元不動産会社の男性に財産を譲るとした公正証書作成から4カ月後の令和元年6月時点で、伯母は短期記憶に「問題あり」、意思の伝達能力は「具体的要求に限られる」うえに、今の季節を理解することは「できない」と判断されていた。
これらを踏まえ、鈴川さん側は遺言公正証書が正当な形で作成されたものではない可能性が高いと判断。地元不動産会社の男性に遺贈された伯母の不動産の固定資産評価額を約4億円と算定した上で、男性側が第三者へ売却することなどを禁止する仮処分を東京地裁に申請。今年11月に認められた。不動産に詳しい関係者によると、近年の価格高騰などを受け、これらの不動産の時価は計約10億円に上るという。
鈴川さんの代理人弁護士によると、男性側の遺贈が無効であることを求めた民事訴訟を近く起こすとともに、詐欺罪で警視庁に刑事告発する意向を示している。
産経新聞は、地元不動産会社の男性やその代理人弁護士にも見解を求めたが、取材に応じなかった。
鈴川さんによると、地元不動産会社の男性とは長年にわたり、不動産管理などを通じて家族ぐるみの付き合いがあった。
鈴川さんは「いろいろとお世話になったことは今でも感謝しているが、その話とこの話は完全に別です」と強調した。
■認知症でも「作成拒まず」
厚生労働省が発表した人口動態統計によると、昨年の死亡数は157万6016人で、前年比6966人増の過去最多を記録。いわゆる「団塊の世代」が90代を迎える令和19(2037)年~24(2042)年ごろには年間の死亡数が160万人を超えるとの試算もある。
多死社会、超高齢化社会の到来で、遺言の内容を公的に証明する遺言公正証書の作成件数も近年増加傾向にあり、昨年は過去最多の11万8981件だった。
遺言公正証書の作成に際しては公証人が遺言者本人の意思を確認する。
とはいえ、ある公証人は「遺言者本人が認知症でも、それを理由に作成を拒むことはない。形式が整っていれば基本的に認めるため、後になってトラブルが生じ記載内容が『本当に本人の意思で間違いなかったか』と追及されても、答えようがない」と話している。(岡嶋大城)