東京・恵比寿10億円不動産を他人が相続 認知症「要介護5」なのに書き換えられた遺言書
平成26年12月作成の遺言公正証書には伯母の死後、恵比寿の土地や建物、賃貸マンションの部屋など13物件を鈴川さんに相続させると記述。鈴川さんら親族と長年にわたり交流があり、それらの物件を管理していた地元不動産会社の男性が証人欄に名を連ねた。
そして鈴川さんは母親の遺産を元手に、東京都内で古着屋をオープンさせる。ところが定職に就いた経験がほぼなく、カネに無頓着だったことが災いし、経営はすぐに行き詰まった。わずか1年ほどで閉店を余儀なくされ、遺産を〝食いつぶす〟日々。税の納付や不動産売買の失敗などが重なって資金が底をつき、昨年10月からは生活保護費を受給している。
■「見切り品」を手に
「裕福だったのは昔の話。今はネギ1本を買うにしても『見切り品』から手に取ります。ジュースを買うのもキツい生活です」(鈴川さん)
困窮にあえいでいた最中の今年4月、入院中だった伯母が他界する。10年前の遺言公正証書に基づけば、伯母の不動産がソックリ手に入り、暮らし向きは好転するはずだった。しかし31年に新たに遺言公正証書が作成され、全財産を交流があった地元不動産会社の男性に遺贈する内容に書き換えられていたことが判明する。
鈴川さんによると、恵比寿で一人暮らしだった伯母とは長年にわたり会うことができていなかった。「高齢の伯母の体調が気になり何度も会おうとしたが、その度に『お手伝いさん』に拒まれていたのです」と明かす。
31年の遺言公正証書に基づき、伯母が持っていた不動産の所有権は地元不動産会社の男性に移転。納得がいかない鈴川さんは知人を通して弁護士に相談し、調査を依頼したところ驚くべき事実が判明する。
■「要介護5」で遺言
「新たな遺言公正証書が作成された31年当時、伯母は認知症で『要介護5』の認定を受けていたのです。まともな判断能力のもとで、伯母が遺言書を残したとは思えません」(鈴川さん)
要介護度判定は「どれ位、介護サービスを行う必要があるか」という介護の必要度を示した基準であり、要介護5は最も重い状態に区分される。