ただひたすら、寂しいという感覚ーー夫死別と重なったコロナ、小池真理子の悲しみ
両親と夫を相次いで見送り、10年がかりで取り組んだ長編小説『神よ憐れみたまえ』を書き終えた。作者本人の、執筆期間の心の動きも作品に投影されているようだ。 「身内を見送る、というのは誰にとっても辛い作業です。この物語の中には、人生の、たぶん、もっとも厳しかった時期にいた私自身が、随所に顔を覗かせているはずです。書き下ろしなので、いつでも諦めてしまうことができた。実際、諦めかけたこともありました。これからしばらくは、自分だけの時間を作りたい。二匹の愛猫と静かに過ごしながら、自分自身の疲れを癒したいと思っています。でも、こんなことを言いながら、どうせまた、ぽつぽつ書き始めるに違いないんですけどね」 --- 小池真理子(こいけ・まりこ) 1952年、東京生まれ。1989年、『妻の女友達』で日本推理作家協会賞を受賞。以後、1995年『恋』で直木賞、1998年『欲望』で島清恋愛文学賞、2006年『虹の彼方』で柴田錬三郎賞、2011年『無花果の森』で芸術選奨文部科学大臣賞、2013年『沈黙のひと』で吉川英治文学賞を受賞。新作『神よ憐れみたまえ』(新潮社)は2010年代に着想し、10年の歳月をかけて紡がれた書下ろし長篇小説。12歳だった少女がさまざまな苦難を乗り越えつつ、生き抜いていく姿を大河小説ふうに描いた物語だ。 撮影協力:軽井沢ホテルブレストンコート