巨大満月が文化財建築に出現!昭和の竜宮城『ホテル雅叙園東京』で神秘的な月見体験をしてきた
浮世絵の風景が目の前に!"月とススキ"が登場
数ある作品の中でも特に注目は、四季の草花や雲に煙る松原の風景が描かれた「草丘の間」で鑑賞できるプロジェクションマッピング(実物に映像を投影する手法)だ。会場を埋め尽くす2000本以上のススキの上には、直径2mの満月が浮かび上がる。本作では「月百姿」で浮世絵に描かれた風景が、そのまま飛び出してきたような空間を再現している。 部屋に一歩足を踏み入れると虫の音が聞こえ、あたり一面に風が吹く。その風にススキがたなびき、巨大な月が徐々に表情を変えていく情景には思わず息を呑むはず。プロジェクションマッピングの終盤には、うさぎが月の中を駆けていくコミカルなシーンも…!ゲストは草原の中に入り、写真撮影することもできる。ここでしか撮影できない、幻想的な景色をカメラに収めよう。
山で美女と談笑した不思議な夜を、浮世絵と空間で表現
「静水の間」では、主役の浮世絵である『月百姿月明林下美人来』と空間の両方で作品の世界観を表現しているので、ぜひじっくり鑑賞してみてほしい。中国・隋に住む男・趙師雄が山で美しい女性と出会い、酒を飲みながら談笑するが、眠ってしまい目を覚ますと目の前には女性の代わりに梅の木があり、実は女性は梅の精だったという物語だ。背景となる「静水の間」の欄間には、日本画家の小山大月(こやま・たいげつ、1891~1946年)による金箔押地秋草(きんぱくおしじあきくさ)が描かれており、物語の情景とも非常にマッチしている。
現代の感性を生かした、若手の作家の作品も必見
日本画家の板倉星光(いたくら・せいこう、1895~1964年)による四季の草花が描かれた「星光の間」では、現代を生きるアーティストが手がけた、月をテーマにした作品と出合うことができる。特に目を引いたのは、錆和紙作家の伊藤咲穂(いとう・さくほ)の作品『夜の礼拝』だ。 子供の頃、真っ暗な道を歩きながら月と話をしていたという伊藤。本作では月のエネルギーが人間と呼吸し合い、融合している姿や月から生まれる水により、芽吹いた花などを独自の和紙手法で表現している。画面上に月の姿を見ることはできないが、そこから満ち溢れる神秘的なパワーを、作品を通じて感じ取ることができるだろう。 因みに会場に着物で来館したゲストは入場料が200円割引になるほか、ホテル内の月のアートをモチーフにしたポストカードをプレゼントしているそうだ。(当日会場受付でチケット購入の場合のみ)週末は日本美を堪能できる『ホテル雅叙園東京』で、粋な月見を楽しんでみては。