トランプ大統領が離脱表明「パリ協定」とは 坂東太郎のよく分かる時事用語
最大排出国の中国が参加したが……
今や最大の排出国で途上国を代表する中国も態度を軟化します。COP20で見送られた事前検証で反対の立場を貫いたものの、次回開催までに自主目標をアメリカと共同で発表するとしたのです。 アメリカは、京都議定書で7%減の削減義務を課されながら、2001年に経済への影響を理由に離脱したという歴史があります。中国は京都議定書にもともと不参加だったので、結果、排出量1位と2位の国が対象外となってしまったのです。 オバマ米大統領は温暖化対策に積極的でした。いわば「最も白い目で見られていた二大国」が手を握って局面を打開しようとしたわけです。トランプ大統領の離脱表明があっても中国はEUと「パリ協定全面履行」で合意。一転して推進の主役へとおどり出ました。 「環境問題に積極的な大国」との地位をアピールしたいとの思惑のほか、李克強首相が工業化一辺倒から経済の「質の向上」を訴えており、国内産業の構造改革を温室効果ガス削減で後押しするという計算があるのかもしれません。アメリカが抜けることで、温室効果ガス削減に伴う資金や技術の支援が少なくなるという不安を抱く途上国に手を差し伸べて、影響力を強める可能性もあります。それは中国が進める「一帯一路」構想とも合致するのです。
----------------------------------- ■坂東太郎(ばんどう・たろう) 毎日新聞記者などを経て、日本ニュース時事能力検定協会監事、十文字学園女子大学非常勤講師を務める。著書に『マスコミの秘密』『時事問題の裏技』『ニュースの歴史学』など