「自分”たち”なら成し遂げられる」と全員が思えるチームの作り方 集合的効力感がカギ
「集合的効力感」とは、ある集団が共通の目標を達成するために自分たちの能力を信じ、達成に向けて前向きに行動できる感覚のこと。米スタンフォード大学の心理学者アルバート・バンデューラ氏により提唱されました。同氏は類似の概念「自己効力感」の提唱者でもあります。ある行為に対して「自分は成し遂げられる」という予期を自己効力感と呼ぶのに対し、「自分たちは成し遂げられる」と集団単位になったものを集合的効力感と呼びます。集合的効力感の高い組織は、高いパフォーマンスを発揮する傾向が高いと考えられています。
「できる」と信じる力は行動を変える 自己効力感と集合的効力感を高める4要素
強いチームとは、どのようなチームでしょうか。まずは、高い成果を上げていること。では、チームが高い成果を上げるために必要なものは何でしょうか。目標設定、円滑なコミュニケーション、信頼……。いろいろと考えられますが、強いチームの要素の一つに、「集合的効力感」が高いことが挙げられます。「集合的効力感」が高いチームは、達成できるかどうかが分からない高い目標を与えられても、「このチームならきっとできる」と自分たちを奮い立たせ、行動へつなげていくのです。 集合的効力感は、個々に宿る「自己効力感」に根ざしています。そのため、自己効力感の低いメンバーばかりで構成されたチームは、集合的効力感も低くなります。 集合的効力感と自己効力感に共通しているのは、四つの要素。成功体験、代理体験、言語的説得、情動的喚起の4要素があるときに効力感は高まります。 分かりやすいのは、「成功体験」。「以前できたのだから今回もできるはず」と思えることで、自信につながります。「代理体験」は、他者の観察による学びのこと。「あの人にできるなら、自分にもできるだろう」という思考回路です。「言語的説得」は、他者から自分は成功するための資質を持っていると励まされること。「情動的喚起」は、感情や身体状態をどのように解釈するかを表します。例えば、ストレスは成長のためのスパイスになる一方、自信を砕くハードルにもなります。感情や身体状態そのものではなく、それをどう解釈するかが重要なのです。 4要素のほか、自己効力感には影響せず、集合的効力感にのみ影響する要素もあります。「集団凝縮性」や「リーダーシップ」です。「集団凝縮性」とは、集団のまとまりの度合いや帰属意識のレベルを表す概念。「リーダーシップ」は、集団をリードする存在が集団にどのような働きかけをするか。これらが集団の士気や働きに作用します。なお、いくつかある要因の中で、過去の成功体験が最も強い影響力を持つことが複数の研究により明らかになっています。 集合的効力感をビジネスで生かすためには、まずメンバー個人の自己効力感を上げること。リーダーは成功体験を得られる場を用意したり、仲間の挑戦を共有したりと、メンバーが「自分はできる」と思えるように支援します。そして、メンバー間の連帯力を向上させるためにチームビルディングに取り組んだり、リーダーシップを発揮できるよう尽力したりと、集団の効力感にアプローチ。「できる」と信じることで行動が変わり、行動の積み重ねが高い成果へと結びついていくのです。