中国、景気支援で特別債など10兆元追加発行 全人代で討議へ=関係筋
[29日 ロイター] - 中国は11月4─8日に開催する全国人民代表大会(全人代)常務委員会で、経済支援に向け今後数年間で国債など10兆元(1兆4000億ドル)超の追加発行を承認することを検討している。事情を知る複数の関係者が明らかにした。11月5日の米大統領選挙でトランプ前大統領が勝利した場合、財政出動をさらに拡大することが予想されるという。 関係者によると全人代常務委員会は会期の最終日に新たな財政刺激策を承認する予定。これには特別国債の発行などによる6兆元の資金調達が含まれる。6兆元は2024年を含む3年間かけて調達し、主に地方政府の簿外債務リスクへの対応に充てる。 さらに、向こう5年の有休土地・不動産の買い取りに向け最大4兆元の特別目的債発行計画の一部または全体を承認する見通し。地方政府は、インフラ事業を主な使途とする通常の年間発行枠(24年=3兆9000億元)に追加する形でさらなる発行が可能になる。 一連の発行計画が一括承認されれば、総額は10兆元を超える。規模は中国の国内総生産(GDP)の8%以上に相当するが、世界金融危機を受けて08年に打ち出した4兆元の大型景気刺激策の13%には及ばない。 関係者は、計画はまだ確定しておらず、変更される可能性があると述べた。 全人代の常務委員会は通常2カ月に1度、偶数月の後半に開かれる。5月に発表された今年の日程では10月に予定されていた。関係者によると、当初10月下旬に予定されていた会合は11月上旬に変更された。変更後の会期は米大統領選挙と重なり、選挙結果に基づき、財政刺激策の総規模などを調整することが可能になる。トランプ氏が勝利すれば、より強力な財政パッケージを発表する可能性があると関係者は述べた。 OCBC銀行の大中華圏調査責任者トミー・シー氏は「現在の政策の優先事項は、まず地方政府の隠れ債務への対応、次に金融システムの安定、そして内需の下支えおようだ」と述べた。 「財政による大規模な刺激策は信頼感を高め経済成長を支える」と指摘するのはS&Pグローバル(香港)のアジア担当チーフエコノミスト、ルイス・クミス氏。「消費支援は依然控えめなようだ。そのため経済成長見通しの大幅な改善やデフレリスクの克服は見込み薄だ」と述べた。